« 雪の初午に冬一番の寒さ。そして、悪運の系譜と、佐村河内守氏のゴーストに夢見る人たち。14年2月5日 | トップページ | フジテレビ跡地に、バブル期の40代に訪れた二度目の青春を想い出した。14年2月11日 »

2014年2月 8日 (土)

音楽・文学・絵画において、佐村河内守氏と新垣氏のゴースト関係は普通のことだ。これはソチオリンピックに新垣氏が仕掛けた渾身の逆転劇だった。14年2月8日

被爆二世で耳が聞こえないとされていた佐村河内守(さむらごうちまもる)氏の楽曲の本当の作曲は桐朋学園大学非常勤講師の新垣隆氏だった。それについて、この数日のワイドショーは両氏へ非難囂々だった。

しかし、彼のファンがどのような被害を受けたのか判然としない。芸術は肩書きに幻惑されず作品そのものを純粋に鑑賞するものだ。佐村河内氏の崇拝者たちも、肩書きのない作品のみに純粋に感動していたはずだ。純粋に作品に感動したのなら、偽装への怒りがあったとしても、作品まで非難するのは行き過ぎだ。

新垣氏の告白の後、作品への評価を変える人がいたとすれば、その人たちこそ、自分の感性を偽装していたことになる。真偽ははっきりしないが、今回、問題になるのは佐村河内氏が耳が聞こえないと偽装していた一点にある。

障害者2級の手帳を受けているので、もし、耳が聞こえると判明したら、罪を問われるだろう。日本コロンビアは彼によって大きな利益を上げているので、訴えるのはどうかと思う。しかし、CDを買った人からコロンビアが訴えられることはあり得る。

佐村河内の姓は芸名ではなく広島地方の由緒ある名で、全国に50人ほどしかいない珍しい姓だ。心配なのはその姓の人たちや子供たちが差別されることだ。同じ姓の人たちへの誹謗中傷だけは絶対に止めてほしい。

今回の偽装と本質はやや違うが、音楽でも、文学でも、絵画でも、歴史的にゴーストの存在は珍しくない。クラシック音楽の巨匠の殆どは、例えばバッハやモーツアルトの曲でさえ、ゴーストの作曲ではないかと疑われている作品が幾つもある。

それについて音楽大学の関係者の話では、今も忙しい作曲家が優秀な学生に曲想を伝えて5000円ほどの報酬で作曲させることは普通にあるようだ。

依頼された学生は実力を認められたことになり、大変に名誉なことで一生懸命に良い曲を作曲して期待に応えようとする。だから、新垣氏が佐村河内氏から作曲を依頼された時、彼は何の疑念もなくアルバイト感覚で受けたのだろう。

非常勤講師をしている桐朋学園大では、新垣氏は学生に人望があり才能も認められていた。彼の得意分野は現代音楽で、ゲームなどの曲を手がけている。だから、今回の事件でクラシックもこなせるのだと驚いている人もいたようだ。

絵の世界でも代作は昔から今に至るまで普通にある。中世の絵画工房は完全分業で、師匠の名は工房のブランド名と考えると分かりやすい。工房では師匠は大まかな構想を練るだけで、背景や細部は弟子たちが分担して制作していた。今のように、一人で全部を制作することこそ、歴史的には珍しい。

浮世絵版画も同じで、北斎はざっと下書きを描いて彫り師に渡した。彫り師の役割は、ラインを優美にしたり力強くしたり、着物の柄は自由裁量で考えて版木を彫っていた。そして、色は刷り師の裁量で自由に行われた。それら一連の工程を経て、世界の美術史を変えるほどの芸術が生まれた。

文学の世界になると、ゴーストライターは職業として認められ、今では誰でも知っていることだ。売れっ子作家は、粗筋をテープに吹き込み、優秀なゴーストライターが、台詞や細部を補強して書き起すことは珍しくない。

今回の事件は上記と本質は少し違うが、ホテルや有名料亭の食品偽装とはまったく違う。佐村河内と言う天性の演技者兼プロデューサーがいて、彼は皆が期待する現代のベートーベンを見事に演じて、新垣氏の作品を世に認めさせヒットさせた。

事件以来、過去の関連記事を読んでみた。それらを短く纏めると次のようになる。

・・・佐村河内守は耳が聞こえないだけではない。昼も夜も大音量の耳鳴りに苦しめられ、精神科医に処方された薬の副作用で立ち上がることもできない。苦しみのあまり、壁に頭を打ち付け、床を這いずり回りながら、頭の中に譜面を描こうと苦悩する。

そうやって、心身の苦痛の中から生まれた作品は、彼の頭の中だけで出来たとは思えないほどに光り輝いている。彼の才能が絞り出した光芒は、音の闇にある心の譜面に、神に導かれるように偉大な作品を刻み付けた・・・

「確かに、頭の外にゴーストがいた」
これは冗談だが、恥ずかしながら、私もNHKスペシャル「魂の旋律・音を失った作曲家」を見ながら、曲はともかく、苦悩する彼に感銘を受けた。アートの世界ではゴーストは当たり前のことだが、今回の罪は耳が聞こえないと偽った一点に集約する。

今回の作曲偽装事件は国際的な大ニュースで、方々の海外メディアにも取り上げられた。推測だが、今回、新垣氏がオリンピック直前に発表したのは、今の時期なら高橋大輔は曲を変えられないとの確信があったからかもしれない。

このまま彼の曲をBGMにして演技が行われば、世界中が新垣氏の曲に聴き入るはずだ。そして、偏見なく良い曲だと評価されれば、彼の名は歴史に残る。更に、高橋大輔が苦難を越えて金メタルでも取れば、作曲家として、日本での評価は逆転する。これは世渡り下手の新垣氏が仕掛けた、渾身の逆転劇かもしれない。

私見だが、高橋大輔は負けても許される大きな言い訳を得た訳で、気楽に演技ができる。だから彼は金メタルに一番近く、もし取ったら、逆境を跳ね返したと絶大な賞賛を受ける。

政府から地方自治体、大手企業や大マスコミや教養主義の知識人たち。それらをピアノもろくに弾けず、譜面も読めない、ホームレスの経験すらある無名の自称作曲家の男が手玉に取って、彼らの偽善を世に晒してしまった。更に新垣氏がソチオリンピックの大舞台に仕掛けた大逆転劇。この筋書きは面白く、最期まで目を離せない。

米国なら映画会社からシナリオ権の買い取り申し出が来るケースだ。三谷幸喜とか宮藤官九郎などがシナリオに起こしたら、喜劇の傑作が生まれるだろう。

・・・最終場面は高橋大輔のフィギュアスケートのリンク。大歓声の中、得点を見上げる高橋大輔。そして、暗い夜道を重い足取りで歩く落ちぶれた音楽家二人。「いい曲じゃないか」大きな方が痩せた方へ語りかける・・・

この筋書きなら、新垣氏の告白はオリンピック直前でなければならない。そして、それを佐村河内氏が考えたとしたら彼は天才なのだが、そこまで現実は巧くできていないだろう。


M_2

今日の夕空。

8日〜9日日曜朝にかけて20年ぶりの大雪の予報。
それで今日の午後、アメ横へアーモンドを買いに出かけた。赤羽から高崎線に乗る。乗客はまばらで、午後の陽射しと座席の暖房が心地よい。最近、外出時はヨーヨーマ演奏のモリコーネの曲を聞く。郷愁のある美しい旋律に、車内放送、列車の車輪の音、それらが融合して昔のことを次々と想い出した。

上野駅で下車して外へ出ると、老いた浮浪者が買い物袋を通したビニール傘を肩にかけ、よろよろと歩いていた。白髪交ざりの立派な髭を蓄え、日に焼けた立派な顔。その世俗も国籍も超越した姿には畏敬の念さえ覚える。上野広小路の信号が青に変わるまで、その姿を見ていた。

平日のアメ横は空いていた。アーモンドは円安の影響で1キロ1450円と150円の値上がり。アーモンド2キロと業務用バニラエッセンス100g500円をカワチヤ食品で買った。

バニラエッセンスはオリゴ糖で甘くしたケィフィアヨーグルトに加える。それを細かく賽の目に切った味付けなしの寒天にかけて食べる。これが大変美味しくて毎日食べている。

その後、有楽町のビックカメラへ行った。昨日、一眼レフカメラのレンズ保護フィルターが割れたからだ。これがないと、持ち歩くのが不便だ。

売り場へ行くとマルミ光機の保護フィルター4500円が良いからと薦められた。この方面は詳しくないので、高いと思ったが言われるままに買った。帰宅してネットで調べると7640円の品だった。

上の写真はそれを装着して帰りに撮ったものだ。埃や水滴が付きにくく頑丈で、夕日などのハレーションが軽減されているように感じる。

日曜朝の積雪予想は25センチ。更に氷結しそうなので知事選の投票率に大きく影響する。そうなれば組織票の共産や公明が有利だが、舛添のトップは揺るがない。私はいつも泡沫候補のドクター中松に入れている。どの選挙でもそうだが、私が投票した候補者が当選したことは一度もない。

M_1

グーが来た、新作。

グーは「グーグー」と優しい音をたてながら、
遠い星からやって来た。

その音を聞いた皆は、気持ちよく眠った。

Ma_3

Ma_4

Ma_5

|

« 雪の初午に冬一番の寒さ。そして、悪運の系譜と、佐村河内守氏のゴーストに夢見る人たち。14年2月5日 | トップページ | フジテレビ跡地に、バブル期の40代に訪れた二度目の青春を想い出した。14年2月11日 »