雨のディズニーシーのレトロな電車の音は千と千尋の神隠しとそっくりだった。14年8月13日
いよいよ引っ越すことにした。今度は72歳の姉と共同生活をするので生活は楽になる。今まで、二人の家賃を合わせると21万に達していた。これからは僅かだが二人の国民年金を加えれば余裕の生活が出来る。
今と比べると、引っ越し先は場末で家賃は格段に安い。しかし、先行きの不安がなくなったのに安堵感がまったくない。半年前、来月どうやって生き残ろうか、最悪、何処まで身を落とせそうか、そんなことに悩んでいた頃の方がずっと生き生きしていた。つくづく楽な生き方が向いていない性分のようだ。
引っ越すと電話番号が変わる。今の番号は生まれて始めて手にした番号なので愛着がある。姪はよく、私の番号にかけると「おばあちゃんが出てくれそうな気がする」と話していた。それは私も同じで、外出先から自宅にかけると、幽霊になった母が出てくれそうな気がして、呼び出し音に耳を澄ませていた。そんなことを思い返すと、たまらなく寂しい。
毎日、思い出の品をゴミとして捨てては喪失感に苛まれている。1ヶ月近く、同じことを繰り返しているのに一向に慣れない。そのように気持ちが落ち込むばかりなので、昨日は台風の置き土産の雨が落ちる中、ディズニーシーへ出かけた。
夏限定の5時入園・夏5ウィークデーパスポートは3900円。
午後4時半、舞浜で下車。デイズニーランドの陸橋通路から眺めると、ゲート前広場は5時から入園する若者たちで埋め尽くされていた。雨模様で空いていると期待して来たが、夏休みの若者たちが押し寄せていた。
ディズニーランド駅からモノレールに乗った。デイズニーシー駅までの東京湾は素晴らしい。遠く、羽田から離発着する旅客機と東京湾をゆったりと進むタンカーが見えた。所々現れる広い駐車場から係員がモノレールに大きく手を振っているのも、ディズニーランドらしいと思った。
ディズニーシーも混んでいた。ロストリバーデルタでのミスティックリズムを観る予定だったが、劇場に到着したのは5時20分過ぎで、最終回は締め切られていた。
遅れたのは途中の橋に佇んで、レトロな電車を眺めていたからだ。電車の鉄橋の向こうにニューヨークを模した港と、豪華客船コロンビア号が雨に煙って見えた。ゴーゴー、ゴトンゴトンと行き来する電車の音がたまらなく良かった。この音は「千と千尋の神隠し」の油屋の橋の下を行く電車の音と瓜二つだ。もしかすると、千と千尋の電車の音は、この音を参考にしたのかもしれない。
ショーが観れなかったことに失望はなかった。傘をさしてベンチに腰掛け、東京駅で買った豚カツサンド700円を食べた。見本の肉厚なトンカツに惹かれて買った弁当だが、実物は肉が薄くてがっかりした。
雨のロストリバーデルタは熱帯の雰囲気がして素晴らしかった。20分待ちで蒸気船に乗った。物憂げな雨景色に合わせて、iPodでSummer time と Johnny Guiterを聴いた。この蒸気船は乗船時間が短く、2曲を聴き終える前に中継地に着いた。先へ行く蒸気船に乗り換えようと思ったが、水上ショー準備のために運行はそこで中止された。
雨の道を引っ返して、再度、電車を眺めていた。この電車の音はいつまで聴いていても飽きない。それだけで入場料の価値があると思ったほどだ。
その後、人気のない鉄橋の下をくぐって、レストラン櫻でアラレ・チキンレッグを買った。私はディズニーに来るとむやみやたらと肉を食う。レッグは甘辛く味付けし、高圧で蒸しアラレがふりかけてあり美味い。誰もいないレストラン外の水辺のオープンテラスの椅子に腰掛け、傘をさしてチキンレッグを食べた。雨のウォーターフロントを独り占めしている気分は最高に素晴らしかった。
食べ終えると喉が渇いたので、ロストリバーデルタへ引っ返し、メキシコ料理屋でコロナビールを買った。ここの、客が少なめなだだっ広い空間は好きだ。疲れた異邦人気分で、ライムの切れ端をコロナのビンにねじ込み、ゆっくり飲んだ。
私の右斜め前方テーブルには17,8歳のカップル二組。女性二人はテーブルに顔をふせて爆睡中。その一方、男二人はスマホでゲームに夢中で、何しに来たのだろうとあきれる。
私の正面遠くには女性の一人客。ブログ用なのだろう、しきりに料理の写真を撮っていた。ビールを飲んだせいか、私も猛烈に眠くなり、BGMのマリアッチを夢見心地で聴きながら10分ほど眠ってしまった。そんな気楽なアンニュイさがこの店の良さだ。
今回はアトラクションは楽しまず、ただ園内を歩き回った。ランドと違いシーは至る所音楽が流れている。それが夜の濡れた舗道に調和して、シーの風景をとても魅力的にしていた。雨のディズニーシーは始めてだが、今回、その素晴らしさを発見した。
閉園まで1時間を残して9時に帰路についた。このところ溜まりに溜まっていたストレスが少し取れた気がした。引っ越しを決意したので、これから更に忙しくなる。今日は大量に出て来た30代に描いた絵を整理した。
これからの変化に着いて行くのは苦しい。それに対応するには、がむしゃらに働く他ないと考えている。仕事の結果が出なくても、一心に打ち込むことが生きる力になるような気がする。
梯子を上る女。
宗教画のパロディ。
当時話題だった山口百恵と三浦友和を描いた。
これらが本来の私の作風であるが、姪の紹介で劇団七曜日の宣伝美術を始めてから激変した。座長の渡辺正行氏の注文は厳しく、始めは巧く行かなかった。しかし、可愛い絵を描いて提出すると、絵に合わせて台本を書き換えるくらい彼は気に入った。刷り上がったポスターは女優さんたちにも褒められ、嬉しくなった私は一気に作風を変えてしまった。
昔の作風を続けていたら、今頃どうなっていたのだろう。ニューヨーク辺りなら受ける可能性があるかもしれないが、日本で売るのはとても厳しい。
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