1滴の尿で、早期ガンを鋭敏に嗅ぎ分ける線虫。そして、春は懐かしさに満ちている。15年3月17日
すっかり春だ。散歩道のツワブキは新芽を伸ばし始めた。
母が健在の頃から、ツワブキの産毛に包まれた若い茎を摘んで食べるのが春の風物詩だった。アクで指先を茶色に染めながらツワブキの皮をむき、さっと煮あげて仏壇に供えた。
口に含むと春の香りが口中に広がり、懐かしさで一杯になった。
郷里の日南では、ツワブキ摘みは子供の仕事だった。裏山の日当たりの良い斜面で、マムシを竹棒で追い払いながらツワブキを一抱えほど摘んで帰った。
夜はみんなでツワブキの山を取り囲んで皮むきをした。私はツワブキでメガネや首飾りを作って遊んだ。むいたツワブキはカツオのなまりなどと煮たり、醤油で煮込んで佃煮を作った。
ほおづきの西洋種。
日本種のような苦みはなく、甘酸っぱくてとても美味しい。
先日の朝ドラ「マッサン」昭和23年設定の劇中で、「リンゴの唄」がラジオから流れていた。私が子供の頃まで、その歌は流行っていた。劇中の雑音だらけのラジオの音を聞いていると、一瞬でその時代へ引き戻された。
昭和20年代の活気があった漁港。
さつま揚げや鰹節加工場。
車の後部に木炭ガス発生装置の釜を積んだ木炭バス。
木炭ガスとは一酸化炭素のことで、その燃焼爆発力でエンジンを動かしていた。しかし、馬力は弱く、坂道にかかると乗客は降りて後ろから押し上げていた。
そのような昭和20年代の漁師町光景が次々と蘇った。
今思うと、日南市大堂津は南九州僻地の小さな漁師町だった。博多や久留米で都会暮らししていた両親には島流しにあったような思いだっただろう。しかし、子供だった私たちには、自然豊かな天国だった。
翌日、iTunes Storeから並木路子の「リンゴの唄」をダウンロードした。しかし、ラジオから流れていた雑音だらけの音と比べ、ダウンロードした唄は澄んだ音で、まったく違って聞こえた。
木瓜の花。
3月11日の三陸震災記念日。
被災直後の夜空は見たこともないほどの星が煌めいていた、と被災者たちが語っていた。首都圏でも、震災直後の計画停電の折、埼玉などでも星空が回復していた。
ミュージカルのライオンキングで、王子シンバに亡き父王や祖先たちの魂が夜空で輝いていると呪術師ラフィキが話し聞かせるシーンがあった。その舞台背景の星空も実に美しかった。
震災後の星空の話を聞きながら、ライオンキングの星空と重なった。被災者たちも、星空を見上げながら、突然に失われたたくさんの魂を想っていたのかもしれない。
ユキヤナギ。
最近仕事で、エリートコースを歩いてきた人たちと話す機会が多い。彼らに共通するのは自分の考えがないことだ。彼らが語るのは、情けないほどに他人や先人の知識ばかりで、自分独自の経験から身につけた知識はほとんどなかった。
地下鉄サリンから20年。様々な検証番組が放映されている。
それを見て感じるのはエリートたちの知性のひ弱さだ。サリン事件に至る様々な凶悪事件の実行者たちは常人よりはるかにエリートで頭脳明晰だった。しかし、人としてどう生き行動すべきかについては未熟で、麻原のマインドコントロールに簡単に陥ってしまっていた。
エリート集団の実行犯たちに比べて、教祖麻原彰晃は正反対の人生だった。
水俣病の未認定患者で片目が見えず、盲学校で鬱積した少年時代を送った。権力志向は強く、熊大医学部や東大法学部を目指したがいずれも失敗した。凶悪な狂気はそれらの反動から形作られたのだろう。その荒々しい狂気に、ひ弱な知性は苦もなく組み伏せられ、一連の事件を引き起こしてしまった。
ダンコウバイ。
15日のNHK・ホットスポット・インド・スリランカに恐竜時代の生き残りの希少種インドハナガエルが登場した。
とんがった顔はすっぽんに似ていた。水中で暮らすおたまじゃくしは昔から目撃されていたが、大人のカエルはほとんど地中でシロアリなどを捕食して暮らしているので、最近まで目撃例はほとんどなかった。
このカエルの交尾光景は実にユニークでおかしい。
ゼリーの塊みたいな大きなメスカエルに小さなオスがしがみつこうとするが、ヌルヌル滑ってすぐに落ちてしまう。それでも何度も試みてしがみつき、なんとか受精を済ませた。産卵を終えたメスカエルは地中に潜り込んで、再度、地中で過ごした。
生物の生態は人知を遥かに超えている。
九州大学・味覚嗅覚センサ研究開発センターの広津崇亮助教たちは線虫C.エレガンスがガンを鋭敏に嗅ぎ分けることを発見した。
発見は、佐賀県伊万里有田共立病院の園田英人外科部長が、4年前に鯖のアニサキスが患者の胃壁のがんに食いついいるのを見つけたのがきっかけだった。
アニサキスは線虫の仲間で、胃壁などの筋肉層の弱いところを嗅ぎ分けて侵入する。健康な筋肉層は丈夫で食い込めないが、ガン組織は脆弱で侵入しやすい。それで、ガン特有の臭気を嗅ぎ分ける能力を身につけたようだ。
九大の研究で使われた線虫C.エレガンスは犬並みの嗅覚の持ち主で、がん細胞が発する非常に微小な臭気を嗅ぎ分けて寄って行った。
実験では被験者の1滴の尿を垂らしたシヤーレで、ほとんどの線虫は健康な尿には近づかず、がん患者の尿に集まった。
その発見率は驚異的で、腫瘍マーカでのガン発見率が2割台なのに比べ、線虫での早期がんの発見率は95.8パーセントに達していた。そして、線虫はほとんどのガンに反応し、今まで早期ガンの発見法がなかった膵臓ガンにも敏感に反応していた。
線虫でのガン検診コストは人件費を含めて数百円と格安だ。
九大は国際特許を出願し、日立製作所などと検診システムの構築を進めている。10年後には、ほとんどのガンを個別に判断する線虫を開発し実用化できそうだ。
日本人の50パーセントはガンにかかる。その検診方法が実用化されたら、簡単で正確に早期がんが発見され、国家予算の医療負担を劇的に減らすことができる。さらに血液採取と比べて、尿1滴で済む検査は患者の心理的負担が小さい。
ちなみに、回虫などの寄生虫も線虫の仲間だ。
さして害のない寄生虫を人為的に体に入れて、アレルギー体質を治す治療がある。太り過ぎだったギリシャ人ソプラノ歌手マリアカラスがサナダムシを飲んで痩せた話は有名だ。
昔は松枯れの原因マツ材線虫病など弊害ばかかり言われてきた線虫だが、これからは人の役にたつものが次々と発見されそうだ。
朝6時の荒川土手。
今日は暖かくなる。
昨夜、「ビートたけしのTVタックル」をやっていた。
北野武は最近、頭の劣化がひどく、以前の毒気も鋭さも消え、使い古されたネタばかりで笑えない。それならと、教養で感心させようと難しいことを言おうとするが、完全に滑っていて中身がない。
もしかすると不摂生な生活を続けたために、隠れ脳梗塞を起こしているのかもしれない。
彼よりずっと年上のタモリはまだ鋭さを残している。タモリは健康に留意して毎日走っている。以前、ブラタモリで、国立競技場の聖火台への長い階段を一気に駆け上ってみせた。
お笑い芸人は頭のキレがなくなったら終わりだ。たけしは高額出演料なので、TV出演が激減するかもしれない。どの番組でも同じ古顔ばかり見せつけられてきたので、新陳代謝されれば面白くなる。
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