招き猫の貯金箱と、未来予測への不安と希望。15年4月10日
引っ越してから運気が下がるのでは、と危惧していた。
しかし、絵描きに絵本に個展と重なり、秋まで忙しい日々が続きそうで安堵している。
新居の区営住宅は家賃が激安で、月々の支払いのストレスから解放されたのも有難い。今、母の介護中から続いた厳しいやり繰りを振り返ると、よくぞ切り抜けられたと感慨を覚える。
しかし、貧乏とは相変わらず仲良くしている。
今年初めのこと、月末の支払いがどうしても1万ほど足りなかった。
同居している姉に話せばすぐに解決することだが、それでは不甲斐ない。
あれこれ思案した末、母が残したすすけた招き猫の貯金箱にたどり着いた。それは高さ30センチほどの左手を上げた三毛の招き猫だ。40年以上昔、浅草の酉の市で母への土産に買った。
こちらへ引っ越してきてから少しゆとりができたので、小銭入れが一杯になると五百円玉と五十円玉を選んで、招き猫に貯金して来た。
深夜、その招き猫の底の封を剥がし、硬貨を取り出していると、姉が起きてやって来た。
ガチャガチャと取り出す音に目覚めたようだ。
姉は黙って万札3枚を机に置いて、何も聞かずに自室へ戻った。
貯金箱には1万以上入っていたので支払いを滞る心配はなかったが、姉にバレたことがとても恥ずかしかった。
恥ずかしい思い出はもう一つある。
20年前、赤羽台に住んでいた頃、母は招き猫に貯金をしていた。
時折、母は貯金箱を抱えて「重くなった。いくら貯まったかな」と目を細めていた。
その時は、壊れた冷蔵庫とビデオデッキを買い換える金がどうしても必要だった。
深夜、貯金箱の底から太いピンセットで硬貨を取り出し新聞紙の上に積み上げた。数えると30万近くあった。貯金箱が軽くなれば母にバレるので、代わりに鉛と10円硬貨を入れておいた。
それから、時折、招き猫を嬉しそうに抱えている母の姿を見ると胸が痛んだ。その内、必ずお金を返そうと心に決めていたが、絵描きに転向して貧乏生活が始まり、100分の1も果たせないまま母は死んだ。
散歩コースの花見。今はソメイヨシノは散って、左手のサトザクラが満開になった。春の移り変わりはとても早い。この公園には立派なトイレが完備していて、花見の時期は大きなゴミ入れが設置され、とても快適に花見ができる。
4月に雪が舞った日の、新河岸川の船着き場。
休日日曜だけ遊覧船が東京湾と行き来している。背後の自然林は旧荒川の河岸段丘で2キロほど続く。
この風景を見ると、昭和30年代あたりに、どこかで見たデジャブ感がある。そこが何処だったのかどうしても思い出せないが、思い出せたとしても、実際は、こんなに立派ではなかったと思っている。
時折、ストリートビューで懐かしい場所の今を見つけると、大抵、記憶より貧相でがっかりする。思い出は記憶にとどめている方が良いのかもしれない。
河岸段丘の階段。
このように赤羽は坂が多い。
先日の不安げな西の空。
新居側の荒川土手の空は360度、遮るものなく実に広大だ。
かって2000年問題が騒がれた。
1999年、インターネットからパソコンに管理された企業まで2000年を迎えると誤作動を起こすと危惧された。それはプログラムで扱う日付の年数を簡略化のために下二桁で扱っていたため、パソコンが2000年を1900年と誤認するために起きるとされた。具体的には物流の混乱、発電所などの異常など、深刻な不況に陥る可能性すら騒がれた。しかし、事前対策が取られて何も起きなかった。当時のパソコン容量はとても小さく、そのような簡略化が多くて様々な問題を起こしていた。
今は2045年問題が話題になり、関する出版物も多い。
2045年あたりに人工知能が全人類の英知を凌ぎ、技術的特異点-シンギュラリティに至るとコンピューター研究者のカーツ・ワイルは予想している。その予想は米マイクロソフトのビル・ゲイツや、米テスラ・モーターズCEOのイーロン・マスク氏らも、賛同していて、ほぼ確かな予測だ。
しかし、それが人類にとって幸せなのか不幸なのかは、予測は大きく分かれている。豊かな生活は間違いなく訪れるが、人工知能は人類から生きがいを奪い取る可能性が大きい。
技術的特異点を超えた人工知能は、人なら1000年かかる研究を一瞬で成し遂げてしまう。おそらく、現在予測されている近未来技術の殆どは実現するはずだ。例えば、核融合炉、究極のアンチエイジング技術、自分自身の細胞から作った、腕、足、眼球など拒否反応を起こさない完全な人工臓器。
安価で無尽蔵のエネルギーを使えば、食料の全てを工場で作ることができて、国土の狭い日本でも食料の完全自給が実現する。その結果、基本的な食料の無料給付が実現しているかもしれない。
アンチエイジングで80歳の老人が20代の肉体を得られたら、介護施設は殆ど不要になる。ガンや重い心臓病などの不治の病でも、簡単に健康体に戻せ、病院のベット・看護師不足も一気に解決する。
その頃は80過ぎの女性でも若返り出産できるようになるので、今、問題になっている少子高齢化はその意味すら忘れ去られてしまう。
私は30年後の2045年どころか10年後の2025年ですら生きている自信はない。しかし、今の50代までならそう難しい未来ではない。技術的特異点が2045年だとしても、実際はその10年前の2035年あたりから人工知能は次々と成果を出し始める。アンチエイジング技術はその一つで、あと20年、重大な肉体欠損を起こさなければ、更に10年後の技術的特異点を健康体で迎えることは難しくない。
しかし、現在の仕事の多くが失われるのは確かだ。
先日週刊現代があげていた殆どなくなる仕事は、銀行の融資担当者・スポーツの審判・不動産ブローカー・レジ係・ホテルの受付係・時計修理工などだった。しかし、実際はもっと重要な仕事がなくなるはずだ。編集者・事務職・教師・医師・農民など、それらの仕事の中の単純作業の分野から消えて行くのは確実だ。
人工知能は人と人とのコミュニケーションすら乗り越える。機械にできることを機械に任せることで、人はクリエイティブな仕事に集中できるようになる、と予測されているが、それほどクリエイティブな仕事が多いとは思えない。結局、労働時間が極端に少なくなって、世の中は毎日遊んで暮らす人だらけになりそうだ。
人工知能が技術的特異点を超えれば、自らさらに優れた人工知能を作り出し加速度的に進化する。そうなれば、人類自体が存在意義を失う。米国で電気や自動車が普及する以前の、ランプに馬車の生活を続けているドイツ系米国人のアーミッシュのような生活が見直されるかもしれない。
カラスノエンドウのサヤエンドウの炒め物。
荒川土手で無尽蔵に採れるが、摘むのも下ごしらえも面倒だ。エンドウの親戚だが、キヌザヤと比べるとしっかりした野生的な味で、歯ごたえもしっかりしている。オリーブ油でさっと炒め、醤油と削り節で味付けした。とても美味しい。
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