記録的酷暑日が終わり、ツクツクホーシにもの想う。15年8月9日
8月7日に記録した37,7度が嘘のようだ。
昨夜は冷たい川風が吹き込み、室温は26度まで下がった。
いつもは暑苦しいタオルケットが心地よく感じたほどだ。
涼しくなった昨日、荒川土手を歩いていると、新品の老眼鏡が落ちていた。
踏まれないように傍のコンクリートの上に置いておいた。
次は新品のブルーのマフラーが落ちていた。
水で湿して首に巻く高機能タイプだ。これは路傍の手すりに結び付けておいた。
その次はタオルハンカチを2枚を拾ったので傍の芝生の上においておいた。
荒川土手は毎日歩いているが、ものを拾うのは初めてだ。
8日連続の酷暑に、落とした人たちの集中力がそがれていたのだろう。
もし、2020年東京オリンピクにこの酷暑が重なったら大変なことになる。
アントニオ猪木はそれを危惧して委員会に秋への延期を提案した。
オリンピック規約では、今からでも時期をずらすことは可能だ。しかし、9月にNFL、10月にNBAとメジャーリーグのワールドシリーズが重なる米国が猛反対しているので無理だ。
加えて、日本の招致委員会は「日本の夏はスポーツに最適」とIOCに提出している。冷房完備の役所で過ごしていた日本の招致委員は、夏の酷暑に気づいていなかったのかもしれない。この分ではエンブレムに新国立競技場と、話題の多いオリンピックになりそうだ。
荒川土手の葛。
葛は強靭な繁殖力を持つが、土手の雑草には歯がたたない。
葛は雑草の葉に蔓を絡ませて陽光を求める。しかし、雑草はしなやかに蔓をかわしてしまう。それで仕方なく道路へ蔓を延ばして活路を求めるが、すぐに人に踏み潰される。
先日の調布飛行場での飛行機事故の後、音信不通の知人を思い出した。
彼は元々の金持ちだが、バブルの頃、先物取引で大儲けし業界紙の1面を飾った。
その頃彼は、調布飛行場に小型飛行機2機とヘリコプターを所有していた。
操縦免許を持っている彼に、一緒に飛ぼうと幾度も誘われたが全て断った。
彼の奥さんは大変優しい人で、ずいぶん世話になった。
その頃、彼女は新興宗教に熱中していた。
ある日、形だけで良いからと、その宗教の伝道師と会って話を聞いてくれと頼まれた。
知人宅を尋ねると、小太りの女伝道師が待っていた。
「あなたの未来には暗雲がたちこめている」
彼女はいきなり初対面の私に言い放った。
絵描きに転向したばかりの私は、核心を突かれたと思った。
「貧乏は覚悟の上ですので、野たれ死にしても構わないと思っています」
私は神妙に答えた。
「こんな自虐的な人は地獄に落ちるほかありませんね」
想定外の反応に戸惑った女伝道師は、後ろに控えていた奥さんに小声で囁いた。
聞こえないふりをすればよかったのだが、いつもの一言多い癖が出た。
「家には生まれる前からお稲荷さんが祀ってあります。
悪いことは全てそちらにお任せしていますので大丈夫だと思います」
お稲荷さんの一言に、女伝道師は俄然元気になった。
「あんな邪教を信じているんですか。
あんなもの信じていますと下半身が獣になりますよ」
恐れおののかせようと放たれた言葉に、私は逆の反応をした。
「ほほう、下半身が野獣ですか。そうなったら彼女が大喜びしそうですね」
嬉しそうにしている私を伝道師は呆れた顔で見ていた。
それから彼女と宗教的な会話を少ししたが、彼女は宗教論には疎く話は噛み合わなかった。
女伝道師がそそくさと帰った後、奥さんの手料理を後馳走になった。
「宗教本部の奥の部屋には荒縄で梱包した1億円が幾つも転がしてあって、
毎日、銀行員が受け取りに来るんですよ」
食事をしながら奥さんが話していた。
「連れ合いが宗教に貢いでいて、困っている」
後日、知人はぼやいていた。
それから間もなく彼は先物で大損失してヤミ金に手を出し、飛行機も財産も全てを失って行方不明になった。
あの事故機は人手を転々として今は不動産会社所有になっている。
周りに人家が密集している調布飛行場は廃止の方針だ。所有者の東京都は飛行機の新規登録を認めないので古い飛行機ばかりだ。もしかすると、事故機は知人が手放した機だったのでは、とふと思った。
20数年昔、女伝道師に地獄に落ちると言われたが、今に至るまでまったく気にしていない。それは失うばかりの人生で、悪いことに慣れていたからかもしれない。
その点、権力や財産を持つ人たちは成功や生や安泰に執着する。
新興宗教はそのような人の弱みにつけこんで稼いでいるのだろう。
立秋を過ぎてから秋を感じる。
ツクツクホーシが蝉しぐれに混じっていた。
散歩帰り、本屋の女主人に会った。
40数年前、初めて会った頃は彼女は初々しい新妻だったが、今はいいおばさんだ。
「涼しくなって楽だけど、夏の終わりは寂しいね」
透明さを増した空を見上げながら話した。
「そうだよね。もうすぐに年の暮れで嫌になっちゃう」
彼女はしみじみと頷いていた。
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