成熟日本は金のかかるオリンピックよりノーベル賞を目指すべきだ。16年10月3日
東京工業大・大隅良典名誉教授がノーベル医学生理学賞受賞。
日本人として誇らしく心底嬉しい。
これで日本人ノーベル賞は3年連続で25人目。戦後受賞に限定すれば米国に次ぎ、日本はダントツに多い。
大隅良典氏の受賞研究はオートファジー (Autophagy)の解明。
それは 細胞内のタンパク質を分解する仕組みの一つで自食(じしょく)とも呼ばれている。
オートファジーが働くと、細胞内の無用なタンパク質や侵入してきた細菌などがオートファジーシステムによって形成された膜内に選択的に取り込まれ、アミノ酸に分解されて無害化し、生命維持のためにリサイクルされる。
代表的な応用はアルツハイマー病やパーキンソン病の治療。
アルツハイマーは脳の神経細胞内にアミロイドβやタウと呼ばれる特殊なたんぱく質が溜まり、細胞が壊れることで発症する。パーキンソン病はレビー小体と呼ばれるタンパク質が蓄積することで発症する。オートファジーシステムでアミロイドβなどの特殊たんぱくが分解できれば、画期的な治療法となる。同様にガンを始め、あらゆる病気治療に応用できる。
4日物理学賞は、日本人候補者が多い分野だが取るのは難しい。
今回は世紀の大発見と言われているアインシュタインが予測した重力波を検出した米国チームが最有力だ。
5日化学賞の日本人候補者も大変に多い。
「がん治療における高分子薬物の血管透過性・滞留性亢進効果の発見」の熊本大・前田浩名誉教授と国立がんセンターの松村保広氏の二人。
「自己組織化分子システムの創出と応用」の藤田誠東京大学大学院教授。
「光触媒(酸化チタン)の開発」の東京理科大学学長・藤嶋昭氏。
他にも綺羅星のように候補者が並ぶが割愛。
ただし、ノーベル賞は有力候補者が多くても受賞できるとは限らない。
政治的すぎる平和賞はスルーして、経済学はもしかするとプリンストン大学・清滝信宏教授が有力。
最後は毎度おなじみの村上春樹氏の文学賞。
毎年のように最有力だが、世界的売れっ子であることが逆に文学賞選考委員に負のイメージを与えている。多分、マイナーな政治的作品の作者が受賞するだろう。
同時に気になるのは、連日ワイドショーを賑わせている小池都知事が投じた豊洲問題とオリンピック施設。
「2兆3兆と豆腐じゃない」
彼女はオリンピック費用を上手く揶揄していたが、オリンピックで金メダル20個取るより、ノーベル賞1個の方がはるかに日本人を鼓舞してくれる。
欧米の主要都市が無駄が多いと軒並み辞退しているのに、東京が招致したのは時代遅れの極みだ。オリンピックは国威発揚したい新興国に任せればいい。
一方、日本の基礎科学は研究費を年間8000億も削られて大苦境にある。この分では10年後、基礎科学に潤沢な資金を注ぎ込んでいる中国がノーベル賞受賞で日本を追い抜くのは確実だ。
未来を支える基礎科学が予算不足で苦境に置かれているのに、半月で終わるオリンピックに3兆円もつぎ込むのはあまりにも大きな無駄遣いだ。費用はそれだけでは済まない。立派な施設ほどその後に莫大な維持管理費が必要で、小池知事が言うように、ほとんどが負の遺産になる公算が大きい。
ボート競技連盟は、宮城・登米市の長沼ボート場ではなく東京でやって欲しいと言っている。しかし、スポーツと言えど費用対効果は重要だ。東京臨海部の「海の森水上競技場」建設が綿密な調査を経て決まったとは到底思えない。手を挙げている開催地に埼玉の彩湖がある。彩湖はボートを痛める海水ではなく淡水で波も静かだ。その上都心から近く格安で建設できる。
森元総理はど派手なオリンピックを最後の花道にしたいようだ。自己満足に国民の血税を使うのは筋違い。森元総理と都議会のドンの極めて親密な関係も、大振る舞い裏の汚れた関係を疑ってしまう。
「大会組織委員会は東京都の下部組織ではない」
との、都民を無視した森発言は実に腹立たしい。
現在の華々しいノーベル賞受賞は、10年20年前に基礎科学に予算をつぎ込んだ成果だ。
年寄りの道楽のオリンピックなど後進国に任せて、浮いた3兆円を基礎科学に投じたら、これからも素晴らしい成果を上げ続けられるはずだ。
とは言え、ノーベル賞が人類の知の結晶として讃えられるのはこれから10年ほどの間だ。
その後は、優秀な少数の学者が大まかな道筋を作り、人工知能を駆使して成果が生まれるようになる。その頃の受賞者は優れた人工知能を開発した国が独占するようになるはずだ。
更に30年後のシンギュラリティを迎えると、学者ではなく大まかな道筋から結果まで全てを人工知能が担うようになる。
今は人類が知を誇れる最後の良い時代なのかもしれない。
先日、亡くなった郷里のKさんが新妻の頃の思い出。
色白で二重まぶたとそばかすが印象的だった。
敗戦直後、大阪でタイピストをしていた彼女は親が決めた漁師との結婚のために無理矢理郷里へ呼び戻された。その夫は若くして病に倒れ、彼女は大変な苦労をして子供二人を育て上げた。
新妻の彼女と都会育ちの母は気が合って仲が良かった。
彼女は私を可愛がってくれ、後年まで私の好物を覚えていて、ことある度に魚などと一緒に送ってくれた。去年暮れ電話をした時は死ぬ前に会いたいと言っていたが、会えないまま亡くなり実に寂しい。
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