ヒラリーのリベラリズム(自由主義)の欺瞞と米国型資本主義の暴走がトランプ勝利を生んだ。16年11月10日
ヒラリーのリベラリズムは資本主義の暴走を招き、自由平等を唱えながら極端な格差社会を生んだ。ヒラリー夫妻はリベラルを装いながら裏で汚れた政治献金で稼いでいた。それがメール問題の元凶だ。それに付け入ったトランプ自身も富裕層側にいる。しかし、支持者の白人労働者たちは彼のごまかしに気づいていない。
トランプは減税すると言っているが、最も恩恵を受けるのは彼自身と少数の富裕層だ。その結果、格差はさらに拡大する。国内の老朽化したインフラ整備や経済再建のために大投資をすると言っているが、減税によって縮小した財源では難しい。
白人労働者が移民に仕事を奪われたのは事実だが、それを招いたのはグローバル化により職場が縮小したからだ。実際は多国籍企業が生産を海外に移転させて米国民を苦境に陥れた。しかし、彼はそれに切り込まず、巧みに白人労働者の憎しみの矛先を移民に向けて勝利した。彼は日本を始めとする海外諸国がアメリカを衰退させたとアジって来た。しかし、米国企業は一貫して世界のトップグールプと富を独占し、多国籍化して税金逃れをしている。そのことも白人労働者たちは気づいていない。
格差解消に不熱心だったのはヒラリーも同じだ。今回の大統領選で格差問題を根本から改革しようとしていたのはサンダース候補一人だったが落選した。それが史上最低の大統領選と言われる所以だ。やがてトランプ支持層は彼の欺瞞に気づくだろう。その時、深い失望感が米国を覆い、反トランプ派との対立も重なり深い混迷が始まる。
誰もが言うように彼は外交防衛については全く無知だ。アメリカの軍事力を強大にすると言っているが財源はない。アジア、殊に日本から手を引き放任すると言っているが、今まで内政干渉してきた歴史を無視している。駐留経費75%負担は世界の米軍駐留地域の中で突出して多いのに全く理解していない。その無知は彼を支持した白人労働者たちも同じだ。彼が人気取りのためにした日本叩きは中国の日本叩きに酷似している。
トランプ勝利を喜んでいるのは中国とロシアだ。
日本の民族主義者はこれを機会に自主防衛を主張するだろう。しかし、自主防衛への環境整備には時間も金もかかり、その虚をついて中国は尖閣侵攻を強めるはずだ。尖閣・沖縄を奪うのは既定路線で、実行しなければ国民の反発で中国政府は崩壊する。その実情を熟知している米軍関係者がトランプに抵抗したとしても、米軍の日本防衛意識は確実に弱まる。
世界が不安に思っているのは彼の人種偏見だ。ヨーロッパとイスラエルとは良好な関係を築くが、それ以外とは摩擦を起こしテロが増えるだろう。大統領に就任すれば偏見を抑え込むが、政策に反映されるのは避けられない。彼は日本、メキシコを敵視して注目を集めたが、日米同盟の重要さをまたく理解していない。国境に壁を作ってメキシコ人を排除しようとしている彼は、米国農業や企業が低賃金の彼らで支えられていることを理解していない。
トランプは豪放磊落に見えるが、その実、損失を与えた者への遺恨を忘れない。日本の外交当局は彼の過去を徹底的に調べ、その点を慎重に考慮すべきだ。お金好きのトランプなら日本が米国債を大量に保有していることを熟知している。それは極端な対日政策の抑制効果はあるだろう。彼との交渉は自己顕示欲をくすぐり、強欲で品のない不動産屋に対するように接すれば巧くいく。
国別米国債保有残高。
1位中国 1兆2440億ドル(約124兆6277億円)2位日本 1兆1147億ドル(約116兆7875億円)3位アイルランド 2706億ドル(約27兆5524億円)4位ケイマン諸島 2694億ドル(約27兆4303億円)
注目すべきは人口数6万人強の英領の西インドの島ケイマン諸島だ。租税回避地としても有名で、ヘッジファンドなどが資産寝かしに米国債を活用して貯めこんでいる。これは極度な格差社会を象徴している。
米国大統領は核ボタンを支配し世界最強だが、政策はトランプ一人で決められることではない。政策には上院下院議員と官僚が深く関与している。1100万人の不法移民を強制送還すると言っているが議会の承認がなければ実行できない。外交に無知なのは興味がなかったからだろう。改めて一から勉強するのは嫌だろうから、共和党の専門家に任せるはずだ。
幸い上院下院ともに共和党が勝った。日本政府と共和党はヒラリー民主よりはるかに親和性がある。昨日の1000円近い株暴落から今日の1000円の大反騰は共和党勝利への安堵感によるものだろう。経済の先行きを最も敏感に反映するのは株だ。この結果は経済混乱は小さいと見ているからだ。円の高騰は米国金利の上昇により、今の所、避けられそうだ。
最も深刻なのは、米国内の対立だ。トランプは収拾を図るが、彼を支持した白人労働者の負のエネルギーと負けた反トランプ派の対立解消は厳しい。本当の格差解消は経済学者のビケティが言うように累進課税による富の再配分しかないが、彼にはできない。
トランプ支持者たちの希望は海外へ移転した企業の国内回帰だが、それではコスト競争に敗れる。それ以前に減益を嫌がる株主たちが許さないだろう。トランプの選択肢は極端な保護主義か、資本主義を更に暴走させてバブルを引き起こし、そのおこぼれを国民に配分することだ。それなら不動産屋トランプの得意分野だ。いずれにせよ、トランプ支持者たちを満足させるのはとても難しい。
鎌倉、円覚寺の山茶花。
和の花は心に染み入る。
東京湾岸。
キリンの群れは日本貿易の象徴だ。
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