寒い小雨の黄昏、鷲神社の酉の市へ出かけた。今夜の超スーパームーンは曇り空で見れそうにない。16年11月14日
今日14日月曜日は68年ぶりの超スーパームーン。
月はいつもより直径で約14%、面積で約30%大きく見える。しかし、予報は曇りのち雨。奇跡的に一瞬でも雲に隙間ができたら眺められるかもしれない。スーパームーンは願い事を叶えてくれる。その一瞬を逃さなかったら本当に幸せになれるかもしれない。
荒川土手をジョギングする人とスーパームーン2日前の月
同じく、土手上から河口方面を見る。
スーパームーン前日。
スーパームーン前の月明かりの土手道を歩いていると、脚の綺麗な女の子が背伸びして若者にキスをしていた。
「つま立つものは立たず」老子24章の一節が脳裏をよぎった。
「爪先立っていてはすぐに疲れてしまう」の意だ。
その通り、どんなに熱い恋でもすぐに終わる。
しかし、通り過ぎて振り返り「若いって良いな」と月と二人を交互に眺めた。
11月11日は寒い曇り空から時折小雨が落ちていた。
今年も、浅草・鷲神社の酉の市に出かけた。コースはいつものように京浜東北線王子駅で下車し、三ノ輪橋行きの都電荒川線に乗り換えた。都電のホームに立つと、デジャブのように昔を思い出した。
都電は電子化された最新車両だった。
運転席すぐ後ろに立って、小雨に濡れた黄昏の下町風景を眺めた。濡れた道を重たげに黒っぽいコートの通行人たちが前かがみに歩いていた。
踏切にさしかかると信号機の音が過ぎた。昭和30年代の懐かしい下町風景が、荒川線にはまだ残っている。不意に「千と千尋の神隠し」の電車のシーンが重なった。
終点の三ノ輪橋で下車し、レトロな梅沢写真館のアーケードを抜けて昭和通りに出た。梅沢写真館内のアーケードには、昔は飲み屋、焼き鳥屋、新聞販売所が賑やかに並んでいたが、今、ほとんどはシャッターが閉まり、青白い蛍光灯に照らされた簡易食堂だけが寂しく営業していた。
昭和通りから国際通りに分かれると夜店が始まり人通りが増えた。
外人女子二人がフーフー息を吹き付けながら美味しそうに鯛焼きを頬張っていた。
アニメの影響で世界的に鯛焼き人気が盛り上がり、カッパ橋には世界から鯛焼き器のネット注文が殺到している。
絵に描いた一匹焼きの鯛焼き器は我が家にあったもので通称「天然物」と呼ばれている。実際に夜店にあったのは20匹ほどを一気に焼くプロ用の通称「養殖物」だ。
人並みでこんざつする国際通りから竜泉で一葉記念館方向へ左折し、裏通りへそれた。
途中、飛不動にお参りした。
このお不動さまは航空機関係のお参りが多い。
寒い小雨混ざりのせいで人出は例年より少なかった。
鷲神社へ入るには、いつもなら30分以上並ぶが15分ほどでお参りできた。
本殿に手を合わせてから熊手のお守りを買った。
いつもは可愛い巫女さんを選ぶが、今回は、手伝いのおじいさんから買った。
「リュックが空いてるよ」
おじいさんは教えてくれた。
礼を言うと「自分もよく閉めるのを忘れるよ」と人懐っこく笑った。
「昔は、後ろから賽銭が飛んできたので、リュックを開けておくとお金が入っていましたよ」そう言うと彼は楽しそうに相槌を打った。短いやり取りに下町らしい暖かさがあって、雨に沈みがちな気持ちが安らいだ。
鷲神社の隣は神仏習合の名残りの長国寺で、酉の市の本家争いをしている。こちらも鷲神社と同じようにお参りした。
本殿内では祈願者を前に僧侶たちが商売繁盛の読経をしていた。
私もあやかって一緒に手を合わせた。
「この野郎、なんで中へ入れないんだ」
私の脇で酔っ払いが警備員に食ってかかっていた。
飲まなければおとなしい人だろう。
成り行きを見たかったが、早く帰りたいので裏通りへ抜け、浅草寺へ向かった。酉の市へ向かう家族連れの外人観光客をたくさん見かけた。
閉園した花やしき前を通って裏門から浅草寺をお参りした。5時過ぎで本殿は閉まっていたが、仲見世から大勢の外人観光客が流れて来ていた。
境内のおみくじ売り場は人だかりがして「簽桶」(おみくじ棒が入った器)を振る音があちこちで響いていた。簽桶から出たおみくじ棒の数字に合わせて引き出しを開け、おみくじを取り出す方式だ。私はかって6回連続凶を引いた。それからおみくじは引かないことにしている。6回連続でも、低空飛行ながら何とか生きてこられたのは謙虚に暮らして来たからだと信じている。
浅草寺は凶の確率が高い。少し立ち止まって眺めていると熟年カップルの男性が「ヒェーッ」と声をあげた。どうやら凶を当てたようだ。「どうしようか」男性はおみくじを手にしたまま目が虚ろだった。傍の女性は「信じられない」とそっぽを向いた。
参考に、ブログに以前書いた凶からの逃れ方がある。それは、利き腕ない方の片手だけでおみくじ用の横棒に結びつけることだ。難しいやり方をすることで困難を克服することに通じ「災い転じて福となす」となる。
仲見世に入ると、熟年白人男性が揚げたての揚げまんじゅうを買っていた。彼は一口食べると美味しかったようで、スマホで写真を撮っていた。画像をSNSに上げるのだろう。
仲見世の混雑の半数は外人観光客だった。人混みをかき分けるように地下鉄銀座線へ向かい、アメ横に寄って帰宅した。
次の酉の市は11月23日。勤労感謝の日と重なるので大混雑だろう。
トルストイの「戦争と平和」全8話が終わった。
この名作を改めて説明する必要はないが・・・時代は19世紀初頭のナポレオン戦争下のロシア。戦争に翻弄されながら貴族社会の若者たちが人生の意味と真実の愛を求めて煩悶しながら生きる。
幾度もドラマ化映画化された小説だが、この英国制作のドラマは貴族社会と戦争がバランスよく配された佳作だった。
最終回、フランス軍の捕虜になったピエールは無学だが思慮深い元農民兵プラトンと出会った。死が身近に迫る極限状態で、彼はプラトンに真に生きることと自由の意味を教えられた。
ナポレオンが敗走し救出されたピエールは、死んだ親友アンドレイの元婚約者ナターシャと結ばれた。
光溢れる果樹園。野外テーブルでの家族が増えた一族の明るく幸せな食事風景。それらを俯瞰してピエールのエピローグが重なった。
・・・苦しみは不幸なこととされている。
でももし、捕虜になる前の自分のままでよかったかと問われれば、喜んでもう一度捕虜になると答えよう。
みんなが座っている、この幸せに感謝しながら・・・
人生が軌道から外れると、もう何もかも終わりだという気持ちになる。
でもそれは、何か素晴らしいことへの始まりでもある。
人生が続く限り幸せはある・・・行く手には多くの幸せが待っている。
ドラマなので原作そのままではないが、上記のエピローグはトルストイの心情そのものだ。だから素朴に心に響く。
トルストイに影響を与えた思想家に老子がいる。
彼の言う幸せは老子的に天地に従って人生を送り終わることだろう。
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