夏の光は死への不安を消し去る。真面目なエリートが親の介護でホームレスに陥る日本。18年6月29日
梅雨なのに心地よい夏だ。
雨は続かず、すぐにからりと晴れる。湿度は低く嫌な暑さではない。
それは子供の頃の夏に似ている。
上京した昭和38年の東京は最悪の大気汚染だった。1年中太陽はぼんやりとしていて、スモッグの嫌な匂いが立ち込めていた。
サッカー観戦のため寝不足だ。公園のベンチでぼんやりしているといつの間にか寝入っている。最近の公園は蚊が減って過ごしやすい。蚊の発生源の雨水受けに都の公園課がボウフラよけの錠剤を1個放り込んでいるので蚊は激減し、半月ほど効果を保っている。
深夜、寝入ってから目覚めると二度寝ができない。
床に入ったまま、暗い天井を見上げていると、瞬時に年月が過ぎて死の床にいる自分を想像してしまう。死については覚悟ができていると思っていたが、その気分は極めて重く息苦しい。それで昨夜は催眠剤のレンドルミンを1錠飲んで二度寝した。
十分に寝たので昼間は心地よかった。
夏の光に包まれていると死はとても遠いものに思えてしまう。生きるとは誰もが考える難題だが、その答えは意外にシンプルなのかもしれない。
今までに天文学的数の人が死んだが、生き残った者は一人もいない。死に関してはあるものが優れているとか、あるものが劣っているとかあり得ない。弱虫でも強者でも、子供でも大人でも、寿命が終われば死は平等に受け入れている。万物斉同、死ほど平等な現実はない。
死は平等だが、死に至る過程は平等ではない。
それは裕福か貧乏かの違いではなく、死に行く人特有の問題が多い。例えば独裁国家の独裁者が倒れた時、体制維持のため若者の新鮮な輸血を受けて生かされ続けることがある。死の苦しみを味わいながら、生かされ続けるのは生き地獄の苦痛だろう。
それはさておき、将来は死に関わる医学が進んで、薬物投与などで眠りを待つように死を心地よく受け入れるようになると予測している。私が死ぬまでに、その制度が普及することを願っている。
公園のネジバナ。
小さな花だが、拡大すると蘭の仲間だと分かる。
この野の花の愛好家は多い。
花の先端が寸足らずなのは、花が出始めた頃に芝刈りがされたからだ。
サッカーはかろうじて日本は予選を突破した。
それを予測して、ポーランド・日本戦ではなくポルトガル・セネガル戦を見ていた。
辛勝したチームは決勝トーナメントで善戦するものだ。
もしかすると、日本はベスト8も夢ではないかもしれない。
梅雨の晴れ間、上野池の端へ出かけた。
光に溢れた不忍通りを颯爽と過ぎていく自転車の女性が心に残った。彼女は絵のように翻るスカートを直そうともせず、すっくと前を向いてペタルを漕いでいた。
凛とした美しい横顔が心に残っている。
この界隈は江戸の頃から住んでいる人が多い。
「小股が切れ上がったいい女」とはこのような人を言うのだろう。
昔のフランス映画にこのようなシーンがよくあったが、恥ずかしがる日本人では珍しい。友人に絵を見せると、日本映画の「青い山脈」にもそのようなシーンがあったと応えた。
戦後間もない頃、女子高生がスカートを翻して自転車で行くシーンだが、フランス映画ほど大胆ではないが、当時としては実に鮮烈であった。
最近読んだ週刊現代の記事が重く心に残っている。
それによると高齢者一人の介護に546万1000円を必要とする。
介護期間は平均して4年11ヶ月。
私は母を8年介護して在宅で看取ったが、その数値は納得できる。
母の介護を始めた時、我が家の蓄えは1000万近くあった。
母の介護期間は5年と計算し、母を看取った後でも立ち直るために必要な資金は残ると計算した。しかし、母の介護は8年に及び、母を在宅で看取った時に蓄えは払底し、ホームレスを覚悟した。幸いにもその時は知人たちの尽力により奇跡が起きて、絵が次々と売れて生き延びることができた。
私のケースは稀で、現実では親の介護のために離職し、死別後、親の年金が途絶えた後にホームレスに陥った人は多い。
記事にあったのもそのようなケースだ。
独身だった彼は父親の介護のために、40代で大手百貨店の1000万の年収を捨てて退職した。父親を看取った後に母親の介護が始まり、更に母親と死別した時点で手持ちの金は0になった。
彼は介護期間も、合間を縫って様々な仕事をしたが、年を重ねるほどに条件は悪くなり、給料未払いもあり生活は改善しなかった。
結局、彼は家賃滞納で追い出され、飼い猫を連れて公園で寝泊まりする日々に陥った。
幸い、支援団体の助けで路上生活は3ヶ月で終わり、生活保護を受けてアパートに入ることができた。彼は今、自分と同じ境遇の人を救いたいと、生活困窮者支援の団体職員として働いている。この問題は自助努力によって解決できる域を超えている。
介護問題と派遣労働は重くリンクしている。高度な教育を受けていても、年を食うと学んだスキルを生かす機会は急速になくなり、希望を失い無気力に陥った中高年を増大させている。このような人材浪費に対して行政は直ちに手を打たないと国力は衰退する一方だ。
追伸--ソフトバンクCMの初代「白戸家のお父さん」を演じた白い北海道犬のカイくんが28日未明、老衰のため死んだ。享年16歳。今出演しているカイトくんとカイキくんは彼の息子たちだ。何となく寂しくて悲しい。
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