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2018年10月 9日 (火)

AI化して、人口減した日本は有利に生き残る。18年10月9日

 昨日は32度を超えたが、今日は程よい。
早く秋らしくなってほしい。

 Eテレの「世界の哲学者に人生相談」が終了して残念だ。私の好きな番組だったが、世間の哲学好きには悪評だったようだ。理由は番組が教養主義ではなかったからだ。彼らは哲学者名とかその著書などの知識にこだわり、哲学の本質である自分で考えることは苦手だった。

 AIロボットも教養主義の彼らに似ている。
最新のAIロボットは人と流暢に会話する。例えば人が「風邪を引いて辛い」などと話しかければ「咳は出ますか」とか「熱はありますか」とか流暢に言葉を返す。しかし、AIロボットは咳や熱に苦しんでいる風邪の本質を理解している訳ではない。単に医学書に書いてある風邪の知識を喋っているだけで、相手の苦しみは全く理解していない。

AIを人に近づけるには、バーチャルな擬似肉体を備えつけて五感で感じる必要がある。しかし五感は、疲れず好き嫌いせず考え続けるAIの特性を摘み取ることになる。


 昨夜の「NHKスペシャル・マネー・ワールド--資本主義の未来・第2集--仕事がなくなる」ではAIによる失業を取り上げていた。AIの影響を一番受けるのは日本で、52パーセントが失業すると言う。理由は日本の人件費の高さによるものだ。
そう聞くと、さほど賃金は高くないのにと多くの日本人は驚く。この場合の賃金とは実際に労働した量に対しての賃金額だ。日本のサラリーマンが実際に働いている時間は短く、1日のほとんどは無駄に過ごしている。もし、合理的に働けば1日の仕事は2時間で済むとの試算もある。

その点、ドイツ人は効率よく目一杯働くので、労働生産性は日本の何倍も高い。それについてサラリーマン経験のある友人は、日本の賃金は束縛時間に対する報酬だと話していた。

 番組ゲストのソフトバンクの孫正義氏は、シンギュラリティを迎えても新しい仕事が生まれるからバランスが取れると話していた。企業家は皆同じことを言うが、AIが不得意なクリエイティブな仕事をすれば良いと言うのは楽観に過ぎる。
デザイナーの多くがギャラの落ち込みに苦しんでいる。絵描きは昔も今も生活は極めて苦しい。イラストレーターは、ゲーム用CGを除き、ほとんどが専業で生活できなくなっている。その結果、卒業しても生活が厳しい美大へ進学する男性は激減し、美大の女子大化が進んでいるほどだ。

孫正義氏は口ごもっていたが、労働者の収入が激減したら、経営者がAIロボットを使って商品を大量生産しても売れず経営は成り立たなくなる。それが分かっていても、日本は取り残されるわけには行かず、企業家はAI社会へ突き進む他ない。


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 先日の寒い雨に煙る荒川河川敷。

 早坂暁・花へんろ 特別編「春子の人形」が再放送された。
春子は主人公亮介の妹だが実の妹ではない。
彼女は昭和初期の松山の商家の前に人形と一緒に赤ん坊が置き去りにされていた。
本当の親は生活に窮したお遍路さんだったようだ。

赤ん坊は春子と名づけられ、良介の3歳違いの妹として仲むつまじく育てられた。
やがて戦争が始まり、16歳の良介は海軍兵学校に合格して海を渡った。
亮介の母親・静子は初めて春子に「本当の兄妹ではない。夫婦になることもできる」と告げた。
兄にほのかな恋心を抱いていた春子は無邪気に喜び、夏休み、兄に会うために海を渡り、亮介がいる山口県の防府へ向かった。
その途中、広島に足止めされた春子は翌朝、原爆によって亡くなった。

 この物語は早坂の実話だ。
彼は13歳で原爆で亡くなった妹のことを、ずっと書くことができなかった。
しかし、死の数年前から、これだけは書き残したいと脚本に取り掛かった。
彼は病と闘いながら執筆を続けたが叶わず、途中から冨川元文にバトンタッチした。
そして、冨川が原稿を書き終えた2日後の2017年12月16日に彼はこの世を去った。

 春子役の芦田愛菜が好演していた。
芦田は春子の実年齢に近い。
早坂作品「夢千代日記」の原爆症に苦しむ夢千代の設定は、妹の記憶があったからだろう。
これはいつまでも切なく心に残る佳作だった。


 先日、アマゾンのジェフ・ベゾスCEO54歳が資産18兆円で史上最高を記録した。
18兆円を使い切るには、1年に1億使っても18万年かかる。
それほどの富豪が全財産をつぎ込んでも、わずか50年の余命ですら確保できない。
どのように巨大な権力や財力があっても死を前にすれば無力だ。

 先日の深夜、放映された映画「オーストラリア」を録画で見た。
時代は第二次大戦初頭のオーストラリア北部の牧場。
終盤で日本軍のダーウイン空爆が絡むが、それは大きな構成要素ではない。
単純に西部劇をオーストラリアに置き換えただけのドラマだ。
しかし、白人とアボリジニの混血少年を見守る老呪術師だけは深く心に残った。


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 彼は槍とわずかな道具だけで、飄々と原野に生きていた。
水を求める時、呪文を歌えば歌声に水脈が共鳴して教えてくれると言う。
しかし、彼らの生涯は現代医学に守られた現代人と比べると短い。
それでも、自然と同化して生きている彼らは、現代人より死への悩みは小さい。
死を迎える過程は、先のジェフ・ベゾスCEOよりはるかに豊かだ。

現代人が彼らのように野生に生きることはできない。しかし、近づくことはできる。空を見上げたり、路傍の草花を眺めるだけで、わずかながら自然と同化できる。それを日々繰り返せば、やがて訪れる死は穏やかなものに変わるはずだ。


 「アジアの優秀な若者は低賃金の日本を選ばない」と先日の週刊ダイヤモンドが取り上げていた。人材募集の成果は需給で決まる。日本企業が本気で優秀な人材を求めているなら、高給を提示して海外人材を集めるだろう。それが分かっているのにそれをしないのは、本気で求めていないからだ。

日本から人材が払底しているとは思えない。なぜなら、優秀な人材が低賃金の派遣の仕事をしていたりしている国だからだ。そのようなミスマッチが起きるのは、才能を見極めることができる企業が少ないからだ。

プログラム開発などのIT関係を除けば、日本企業が海外人材を求める理由は、単純に普通の労働者不足と海外市場開拓を任せたいからだ。その程度なら、頭脳明晰でなくても、体が丈夫で真面目に働いてくれるだけで十分だ。しかし、新技術や製品の開発となると、少々優秀なくらいの中国人を使うより、少し落ちても日本人研究者の方が安心して任せられるし成果も出やすい。


 米中貿易摩擦の原因の一つに、中国人技術者による違法な技術流出があった。トランプ大統領が強硬派だと日本では思われているが、実際は米国議会の方がはるかに強硬だ。長年、中国が米国の3倍も黒字を重ねて来たのに問題にならなかったのは不思議だ。それは、クリントンからオバマまで中国に誤った幻想を抱いていたからだ。彼らは中国を擁護して豊かにさせれば自然に民主化し、米国と仲睦まじく世界の覇者になれると楽観的に思っていた。
その考えの根底に、戦後、急速に民主化させた日本での成功体験があったからだ。

しかし、中国は豊かになる程に言論は弾圧され、海外侵略を繰り返し、後進国に高利で金を貸し付け、政府要人を買収して腐敗させた。米国はやっと、その事実に目を向け始めた。

 日本は中国研究が世界一進んだ国だ。
戦前の満鉄調査部など、中国奥地の極めてマイナーな地方の村史まで詳細に調べ上げている。
中国の民主化が極めて難しいことを日本は知っていた。中国は民主化すれば国は分裂し収拾がつかなくなるので、毛沢東のような強力な独裁者が必要だと知っていた。欧米がそれをはっきりと認識したのは最近のことだ。


 海外の優秀な人材確保は中国韓国が熱心だ。ただし、雇うのはすでに高度な技術を身につけた人材で、技術やノウハウをすべて吸い取ったらクビにしてしまう。そのように、彼らは長年、技術を盗むことに熱心だったので、盗まれないセキュリティに長けている。韓国のサムソンなど、外部の人間は軍事施設並みの厳重なセキュリテイを経なければ出入りできない。だから、小さな紙片1枚でも持ち出すことはできない。その点、日本企業は大甘で、重要情報でもやすやすと盗みだすことができる。

セキュリティの甘さは欧米企業も大差ない。
米軍の巡航ミサイルや無人武装偵察機、携帯電話など主要兵器の重要部品で中国に大きく依存している。中国の工場で製造されたコンピューターのサーバー用のマザーボードに情報窃取を目的とした超小型のマイクロチップが秘密裏に組み込まれ、アップルやアマゾンなどの米企業約30社に納入されていた。そのような現実を目にして、中国政府が自国民すべてを徹底的に監視弾圧し、海外流失人材を利用して世界中に監視と管理を広げ始め、危険な国家に変貌したことに欧米はやっと気づき始めた。

 それでも人口減の日本は海外の人材を入れないと衰退する、との意見が多い。
対してAI専門家の多くは、日本の人口減は国家安定に役立つと考えている。
他国に先駆けて日本をAI化することが条件であるが、人口が減れば仕事を与える義務が軽減するので有利に働くとの考えだ。だとすれば、孫正義氏などの先端起業家たちが世界に先駆けて突っ走ってくれることは必要かもしれない。


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