米中貿易摩擦の展望に、こんまり・メソッドが影響。6月2日、NHKスペシャル・彼女は安楽死を選んだ。令和元年6月18日
物を捨てるのは難しい。いざ捨てようとすると「まだ使える、いつか役に立つかもしれない、思い出の品だから」と様々な考えが思い浮かんで迷う。私の場合、仕事用の資料は大して役立ちそうになくても捨てられない。今はネット検索で良好な資料はすぐに見つけられるのに、それでも難しい。
衣服に関しては、流行遅れになったら躊躇なく捨てられる。
ただし、ボーダー柄のTシャツは40年以上使っていても捨てられない。今のTシャツは丈が長すぎて、裾が股間下に達し、だらしない感じがするからだ。その点、昔のTシャツはほどほどの丈で、とても気に入っている。
こんまり・近藤麻理恵さん34歳は、手にした時に心がときめかないものは感謝を込めて捨てる片付け術「こんまり・メソッド」を考え出した。日本でも話題になったが、米国では生活哲学に進化し続けている。
米国の家屋は広い。浪費好きな米国人はクレジットカードを使って手当たり次第に買い込み、買ったものは使われることなくゴミ化している。そこに「こんまり・メソッド」が入ってきた。その結果、いらない衣服や家具などが大量に慈善団体に寄付されたり、リサイクルショップへ持ち込まれ、浪費を自覚するようになった。
これまでの米国人の浪費好きは凄まじく、借金をしてまで物を買いまくった。そのおかげで膨大なドルを稼いだのが中国だ。だから、その巨額赤字を解消しようとするトランプ政権の動きは健全な流れだ。今は野党の民主党も、トランプに近い考えをしている。
米国では、消費のあり方を反省し始める人が確実に増えている。
その流れを作ったのが「こんまり・メソッド」だ。
日本には昔から片付けと節約の美学があり、格別な新しさは感じなかった。それに似た考えは米国にもあったが、大量生産時代に入ってから節約が罪悪視され、質素倹約の美徳は日本より早く失われた。
中国は日本や欧米から安価に、時にはタダで手に入れた技術で進化し、安くて良い製品を作るようになった。私が使っているパソコンも、ほとんどは中国で作られている。しかし、中国製品の多くは、すぐにゴミに代わるものばかりで、10年20年使い続けたいと思うものは皆無だ。殊に糊付けで組み立てられた家具や、見栄えだけのグッズ類など、ゴミを買ってしまった後悔しか残らない。
中国あたりが確立した安価で効率的な生産方式により、世界の消費者たちは、ゴミを買うためにせっせと働き、貴重な資源を浪費し、地球を急速に疲弊させてしまった。
厳しい未来予測では、このままでは2050年に気候大変動が起きて、人類の大半が滅びる。
楽観的な予測でも、今のまま人口増加が続ければ、30年後のアマゾンの熱帯雨林は半分になり、世界的な気候変動が起きて食糧生産も危機的状況となる。
世界一の食糧生産国の米国では、1tの食料を生産するために1tの肥沃な土を失っている。今、穀倉地帯で利用している水は地下の化石水で、低コストの海水淡水化技術が生まれない限り、化石水は枯渇し農業の未来は絶望的だ。
昔から、中国人のほとんどが肉を食べ始めたら、世界の食糧生産は破綻すると予測されていた。今、それは現実となり、中国人は世界中の食料を食べまくっている。東シナ海の魚資源は、元々資源保護の思想がない中国漁船の乱獲によって枯渇してしまった。
中国は食料自給自足ができない国に変わった。食料自給に関しては日本はもっと悲惨だが、日本には広大な休耕田があるだけ救いだ。AIが進化すれば、狭くて複雑な形状の田畑での農業自動化が可能になるからだ。
習政権が目指すのは世界の富の独占だ。しかし、特定の国が利益を独占する時代は必ず終わる。今までの米国歴代政権は中国を甘く見て優しく対応しすぎた。中国は世界から知的財産を巧妙に盗み、米国人の無謀な消費欲に頼って大発展した。
習政権は米国人の消費欲は衰えることはなく、米中貿易戦争は自然に収束すると楽観している。しかし「こんまり・メソッド」のヒットを見ていると、米国人は確実に無駄遣い生活を改めようとしている。中国はそれらの動きを軽視しないほうがいい。
スイスでの安楽死を希望する日本人が増えている。
彼らは、スイスまで行ける体力と財力がある人たちで、安楽死担当の医師との面談に応じられる人たちだ。
6月2日のNHKスペシャル「彼女は安楽死を選んだ」はそのような日本人の一人を取り上げていた。
小島ミナさん51歳は多系統萎縮症。
全身を痛みが襲うので鎮痛剤を常用。
多系統萎縮症の経緯は、体の機能を次々と失い、最後は人工呼吸器に頼ることになる。彼女は安楽死をしたい気持ちが表明できるうちにスイスへ行き、担当医師との面談によって承認された。
スイスでの死の前夜、日本に残った妹に笑顔で別れを告げ、付き添いの姉たちと笑顔で会話をしながら最後の晩餐をした。そして翌日、点滴に睡眠薬を注入すると、30秒で深い眠りに陥り、すぐに亡くなった。
安楽死を選ぶほどだから、彼女は見るに耐えないほどの激烈な苦痛の中にあると想像していた。しかし、彼女の状態はその段階に遠かった。
死直前の彼女は言葉はたどたどしいが、手足は動くし表情も豊かで思考も普通だった。番組を見た印象では、毎日60人ほど亡くなっている自殺と同じ、個人的な心の問題だと思った。
40年以上昔、親しくしていたAさんの臨終に立ち会った。
Aさんは肺がんの末期で、鬱血した肺胞から多量の水分が浸出し、激しい呼吸困難に陥っていた。
死の前夜遅く、激しい苦痛で歪み、真っ赤に充血した顔を見るのが辛くて私は帰宅した。
私が帰宅してから数時間後、家族は強力な鎮痛剤の投与を医師に要請した。
投与されるとすぐにAさんの表情は安らかに変化し、30分ほどで死に至った。
経緯は、翌朝、家族からを聞いた。
Aさんのような激烈な苦痛の中で死を迎えた人たちと比べ、安楽死した彼女は体力もあり、生きることを楽しめる力が十分に残っていた。
NHKスペシャル「彼女は安楽死を選んだ」では、スイスで安楽死した彼女より、ずっと重症の多系統萎縮症の鈴木道代さん50歳も取り上げていた。
彼女は言葉は一切喋れず、まぶたの瞬きでやっと意思を伝えられるだけだった。
彼女は、専門病院から2時間の一時帰宅の時、車の車窓から桜を眺めて泣いていた。
その涙に、生きている感動を感じた。
心情的には、私は後者の鈴木道代さんに強く共感した。
番組中で、延命治療を止めて死に至るのは消極的安楽死と言っていたが、その表現は誤解を生む。
人工呼吸器を外すのは消極的安楽死に相当するが、終末期老人に胃ろうや点滴をしないで死を迎えさせるのは安楽死ではない伝統的な自然死だ。そのような自然死は欧米の老人病院では普通なことだ。日本でもそのような自然死をさせるようになったら、国民健康保険の財政難が劇的に改善されるとの試算がある。しかし、リベラル系の医療従事者や弁護士たちが猛反対しているので実現は難しい。まだ当分は、骨と皮になるまで老人を生かし続けている生き地獄が続きそうだ。
| 固定リンク