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2021年3月18日 (木)

老いると生者以上に死者たちが大切となる。終末期に救ってくれるのも死者たちのお迎えだ。赤羽自然観察公園のオオタカ。2021年3月18日

すでに春。桜・カラスノエンドウ・花梨、雪柳と一斉に開花した。
日中は暖かいが、散歩帰りには冷たい北風が吹き始める。
その備えに、リュックにはいつも薄手のウィンドブレーカーが入れてある。

散歩中の喫茶店では混雑した店内を避け、外テーブルで休む。
コーヒーはいつも温かいカフェラテ。
濃厚なミルクで苦味の角が取れて、口当たりがとても良い。

カフェラテを口にしながら、ぼんやりと人通りを眺める。
時折、杖をついた老人がよろよろと過ぎる。
「この人が一人で外出できるのは、いつまでだろうか。」
そう思いながら「頑張れ」と小声で励ます。
私はまだ杖なしで散歩できるが、老いは年々否応無しに進行している。

昨年末、近所でおばあさんと挨拶を交わした。
彼女は私を知っていたのに、私は誰なのか分からなかった。
通り過ぎてしばらくして、やっと分かった。
昨年始めまで、彼女はふっくらとして、とても元気だった。
しかし、わずか10ケ月ほどで、誰なのか分からないほどに萎み、やつれていた。
最近人づてに、彼女が亡くなったと聞いた。
関わりがあった人が、消えていくのは、寂しくて虚しい。

老人ではなく、通り過ぎる若い男女の日常を妄想するのは楽しい。
ただし、思い浮かべるのは昭和の青春だ。
・・・「帰りたくない、1秒も離れていたくない」
男の背中にしがみつく女のしどけない姿。
それから、なし崩しの同棲生活。
銭湯帰りの、女の白いうなじを見てドキドキする男・・・
その先は老人と若者ではかなり違う。
1年を経て他の異性が気になり始めて破局を迎えるまで、老人は妄想してしまう。

後先考えず、幸せを追い求めるのが若者。
幸せの後の破局。
そして、自分の死に至るまで考えてしまうのが老人だ。

以前、終末医療に携わっている人の手記を読んだ。
死期が近づくと、4割の人が"お迎え"を経験する。
"お迎え"を経験した患者は気持ちが安らぎ、死を穏やかに迎えられると言う。
母の終末期にも、先に逝った姉や父が"お迎え"にやって来た。
それは超現象ではなく、母の酸欠した脳が作り上げた幻覚だ。

死んだ裕子姉はテレビ画面に現れた。
母に呼ばれていくと「裕子がテレビに出ているよ」とベットの母は嬉しそうに指差していた。
早世した繁兄が"お迎え"に現れたのは、深夜、様子を見に行った時のことだ。
母は私の気配にハッと目を覚まして「繁、元気だったの」と満面の笑顔で私を見上げた。
私は否定せず、黙って母の頭を撫でた。
その繁兄が死んだのは40年昔だ。
私と繁兄は似ていない、と思っていた。
だから、なぜ間違えたのだろうと長く思っていた。
最近、昔の私の写真を見つけた。
その写真を見て、兄と雰囲気が似ていることに初めて気づいた。

401985

40代の同窓会の時の写真だ。
傍で大笑いしている女性は、この10年後に亡くなった。

私の終末期には誰がお迎えに来てくれるのだろうか。
仏壇に手を合わせる時、みんなで"お迎え"に来て欲しいと願っている。
それをひたすら続ければ、必ず誰かが来てくれるはずだ。
死に瀕して、幻覚だとか迷信だとか考える必要はない。
ひたすら"お迎え"現象が実現すると信じている。

昔、チベット仏教の「死者の書」が流行したことがあった。
「死者の書」は、人が死んでから起きることを詳細・具体的に説いたお経だ。
チベット仏教では、肉体は死んでも聴覚は長く生き続けると考えられている。
僧侶は49日の間、死者の耳元で「死者の書」の経文を語り続ける。
すると死者の魂は解脱し、涅槃に入ることができる。
衣類と布団に包まれた屍体の傍らで、49日もひたすら唱え続ける光景は凄まじい。
冷涼で乾燥した地域だから、それが可能なのだろう。

涅槃とは迷いのない絶対的な安らぎの世界だ。
仏教には様々な生き物に生まれ変わり生き続ける輪廻思想がある。
輪廻は救いだが、同時に迷いや苦悩も生む。
だから、輪廻から解き放たれて解脱し、涅槃に入ることが最上とされている。
一般仏教では解脱を目指して、熱心な信徒は過酷な荒行をする。
しかし、チベット仏教では、死は解脱する最高の機会だと考え、誰でも「死者の書」の経文を聴くことで涅槃に至る。
そのようなチベット仏教でも解脱を確かなものとするために、熱心な信徒は五体投地をしながら聖地巡りをする過酷な修行をする。

死の先に安らかな涅槃が待っているのに、敢えて荒行をする必要はない。
死に至る苦しみこそが究極の荒行だ。
だから、死の苦しみが強いほど解脱できて、涅槃へ至る。

本当に死を経験した人はどこにもいない。
だから、死は恐怖だ。
死に至っていない臨死状態から生き返った人なら大勢いる。
母は近所の医院で麻酔を失敗して、臨死体験をした。
それはとても安らかで、美しい光に満ちた世界だった。
その経験以来、母は死ぬのが怖くなくなったと話していた。
脳挫傷で極限の激痛を経験した友人も臨死体験をした。
「とても静かで、何の苦しみも悩みもない、実に爽やかな気持ちだった」と友人は話していた。
だから、どんな人でも死の瞬間に安らかな涅槃に入る、と私は信じている。

最近、老いを感じる。
70歳代後半に入ったのだから当然のことだ。
体の不調もあちこち現れている。
でも、治療しようとは思っていない。
それは耐え難いほどではなく、様々な工夫で切り抜けられるからだ。
疲労感は、運動を分散し適度に休息をとることで解決している。
60歳代まで散歩途中で休むのは風景を楽しむためで、疲労のためではなかった。
電車に乗っても決して腰掛けなかった。
今はたとえ5分の電車中でも腰掛けている。
散歩では30分歩けば、疲労がなくても5分間はベンチで休むことにしている。

先日まで昼間は3時間歩いていた。
今は夜の散歩と分散している。
その健康効果は大きく、荒川土手の夜の散歩は気持ちが良い。
土手道には街灯がなく真っ暗だ。
10時過ぎまで、ジョギングや散歩をしている人が絶えない。
夜風は心地よく、土手から見下ろす夜の街も美しい。
夜の散歩をすると、身体中が浄化される。
静かな夜道を歩いていると、先に逝った家族や友人たちが話しかけてくる。
死者たちと会話すると、とても安らぐ。
すでに、親しかった人たちの過半数は鬼籍に入った。
生き残っている者たちも老いて、昔のような付き合いは無理だ。
今は、死者たちが人生の大部分を占めている。
大河ドラマも、名作映画も、英雄譚も全て死者たちの物語だ。
彼らに魅力を感じるのは、死への道しるべとなって救ってくれるからだろう。

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先に逝った家族たち。年齢は享年。
左から、私、母、父、繁兄、祖母、裕子姉。
舞っている三羽のツバメたちは、巣立ちする前にカラスに食べられてしまった。

繁華街に人が戻ってきた。
政治家や識者は自粛疲れだと警告しているが、実態は違う。
今回の日本のコロナ禍はマスコミが騒ぐほどの危機ではないと、国民が気づいたからだ。
国民の多くは警戒を捨てないまま、コロナを日常生活に取り込み日常を楽しむことを選んだ。
医療関係者たちが言うように、コロナ0を目指したら永久に日常生活は戻らない。

59歳までのコロナ死者は、全体の3パーセント。コロナ死者の97%は60歳以上だ。
街にくり出す多くは59歳以下で、感染発症しても死ぬ人はほとんどいない。
コロナ0まで緊縮は続けるのは暴論だ。
今年が人生最後の春となる人のことも、考えてほしい。
コロナは伝統を毀損してまで恐れるほどの疫病ではない。
味覚嗅覚異常や息苦しいコロナ肺などの後遺症は嫌だが、今程度なら共存はできる。


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先日の荒川土手で撮影していた。
冷たい北風の中、アシスタントが黒い薄物をまくって放つが、なかなか思い通りになびかない。
撮影は延々と続けられてたが、モデルの子はとても元気に対応していた。
モデルの髪型は少女のように左右二分して纏めていたが、少し変えて描いた。

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緑道公園の夕暮れ。
赤羽は都会に自然が溶け込んだ風景が多い。
この場所も撮影スポットとして、よく利用されている。

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母を毎日連れて行っていた赤羽自然観察公園の古民家。
閉園時間の後だったので、鉄柵の間から撮った。

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自然公園の鉄柵沿いに歩いていると、カメラを持った人たちが集まって何かを見上げていた。
近づくと樹上10メートルほどにオオタカがいた。
最近住み着いて、早朝に野ネズミなどの狩をしているようだ。
野生の姿は、惚れ惚れするほど可愛い。

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東京医療センターの桜。まだ1分咲だ。
王子国立病院から社会保険病院に建て替えられた20年前は、まだ幼木だった。

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同じ病院庭の花梨の花。
秋には芳香高いカリンがたくさん実り、完熟して落ちる。
市販のものと違い果肉が滑らかで、ジャムにするととても美味しい。

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