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2021年5月 1日 (土)

マウントを取る虚しさを、荘子は2千年前に語っていた。2021年5月1日

「マウントを取る」
それは猿など動物の示威行動=マウンティングの略で、今は人間関係でよく使われる。
スポーツなど数値勝負のマウンティングは受け入れ易いが、家柄、学歴、貧富など、数値にできない人格に関わる分野は軋轢を生みやすい。ことに貧しかった昭和30年代は、隣家が洗濯機やカラーテレビを買うと、負けずに我が家もと、薄っぺらなマウンティングが蔓延していた。豊かになった今は「自分には自分の生き方がある」とまともだが、マウンティングは形を変え「ステルスマウント」とか「誤爆」などの言葉が派生している。

ステルスマウントとは、あからさまに優位性を主張せず、密かに自慢する行為だ。
例えば昼食会などで、南仏産の高級ワインなどを振舞う行為などがそうだ。ワインを口にすれば、黙っていても「南仏で過ごしたの」などと誰かが聞いてくれる。近年、この手のステルスマウトはさらに進化した。例えばインスタ写真の片隅に、南仏風景や日本では手に入らない高級品をさりげなく写し込ませる手法だ。

さらに巧妙なステルスマウントとして、高級ワインを振舞われた場面で、ワインの蘊蓄を語れば、自分の世界に相手を引きずり込み、マウンティングを逆転できる。そのような取る取られたの場面は、欧米ドラマに必ず登場するので勉強になる。

クダクダ言ったが、マウンティング効果は商売に利用されている。例えば、高級装身具や時計を身につけ、高級車を乗り回していれば、誰でも簡単にマウントを勝ち取ることができるからだ。巧みな宣伝ほど、マウンティング効果は巧妙に仕込まれている。

しかし、老いるとマウンティングの取り合いは面倒になる。
複雑に仕込まれたステルスマウントでも、手の内を即座に読んでしまうからだ。
もし自慢したいことがあったら、率直に自慢して、後は素早く話題を変え、その場の雰囲気を壊さない様に努める。ただし、自慢は1回だけにすることが肝要だ。自慢に対する相手の反応が薄い時「聞こえなかったのかな」と繰り返す人がいるが、人は嫌なことは聞こえていても聞こえないふりをする。だから、自慢は1回コッキリにして、反応が薄かったら潔く諦めるべきだ。

もし、自慢話を聞かされる立場なら、大人になって、しっかり聞いてあげると好感度が上がる。
中国に、聞き上手の哀駘它(あいたいだ)の逸話がある
彼は極めて不細工で風采の上がらない男だった。しかしなぜか、若い女性や人妻かから「あなたの恋人になりたい」と大層な人気があった。その訳は、彼は無類の聞き上手だったからだ。彼は自ら蘊蓄を語ったりしなかった。どんなにつまらない話でも、心から聞き入ってくれた。それで、彼と接するものは全て心地よくなって好意を持った。
その逸話に関して、米国の心理学者の言葉がある。
「うなづく者ほど上の空」
いくら聞き上手でも、心がなかったら逆効果で、軽蔑されてしまう。
哀駘它(あいたいだ)が人に好かれたのは、言葉を理解できる高度な知性を備えていて、真剣に聞き入ってくれたからだ。
蛇足だが、最高のマウントの取り方は、高級時計でも高級車でもない。哀駘它の様に、気品満ちた素人女性を傍らに侍らせることだ。「どうして、こんなへちゃむくれが」と羨望の的になるのは間違いない。

老いてから大切なのは、残された貴重な時間を和気藹々と楽しむことだ。誰かが、自分のことを褒めてくれたら、嫌味なく率直に喜び、長引かせないことだ。そして、どんなにつまらない話でも、楽しそうに聞き入ってあげることだ。それが人生を楽しくさせてくれる極意だ。

マウンティングの虚しさについては、2千年前の荘子の有名な言葉がある。

 心は固と(まこと)に死灰(しかい)のごとくならしむべし

「嫌なことは早く燃え尽くして灰にしてしまうのが良い。」
同様に「良いことも早く燃やし尽くして灰にしてしまうのが良い。」との意味だ。

20年以上昔、同窓会に出席していた頃、長年顔を出さなかった者が、突然に出席することがあった。
彼らは、旧友が恋しくて出席したわけではなかった。
豪邸を新築したとか、息子が東大医学部に受かったとか、本人が会社社長に出世したとか、自慢したくて出席していた。
自慢話を聞かされる側は楽しくない。むしろ苦痛だった。
皆一様に口先で「それは素晴らしい」と褒めながら、横を向いて嫌な顔をしていた。
この状況は、よほど鈍感な者でない限り、すぐに理解できる。
結局、期待したほどの快感は得られぬまま虚しく同窓会は終わり、二度と出席しなくなった。

同窓会では、不幸を話す方が受けが良い。
「愛妻がガンに罹った」「大学受験に失敗した息子が引きこもりになった」「会社が倒産した」などがある。しかし、不幸話しばかりだと、何か頼まれるのではと警戒される。私の経験では、7割不幸話しをしたら、必ず3割は幸せな楽しい話にする。そうすると、みんなの受けが良かった。

利己的な快感のためにマウントを取る者は知性がないと受け取られてしまう。
前記の様に上手に付き合うと、人生はとても楽しくなる。

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先日、納品した注文絵。
サックスを主題に描いて欲しいとの発注主の依頼だった。
「要望は他にありませんか。できる限り応えます」
そう言ったのが間違いで、追加の要望に自縄自縛されてしまった。
絵を描く時、それは一番困った状況だ。
ああだこうだと試みていくうちに、絵は小さくつまらなくなってしまった。
そして、自分から確約した締め切り3日前、意を決して完成した絵を塗りつぶした。

「依頼者を裏切るつもりで、好きな様に描こう」と決意して、それから3日間、小細工を弄さず一気に描き上げた。
絵は一気に描くと力強く仕上がる。
おかげて、先方にとても喜んでもらえた。

しかし、最後の徹夜が響いて、しばらく疲労が抜けなかった。
若い頃なら、2,3日寝なくても平気だが、この歳になるととてもとても厳しい。
今は幸いにもコロナに感染せず、体調は回復しブログを記すことができた。

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