日本ダメダメ論と、アップル・ストアの対応への不満。2021年11月27日
米国心理学会の試算では、職場のストレスによって失われるコストは年間5000億ドル。失われる就業日は5兆5000億日。職場で起こる事故の60〜80%がストレス起因。通院の80%がストレスに関係している。
そのような米国にくらべて、民度の高い日本でのストレスは小さい。
しかし国内では、日本ダメ論が跋扈している。例えば失われた30年。その間の中国、米国などの躍進の礼賛。同様に日本も躍進すべきだ。それらがダメダメ論の根拠だ。しかし、中国と同じように世界各国が躍進したら地球環境がどうなるかは考慮されていない。そうなれば、炭酸ガス排出量は指数関数的に増加し、食料増産のために自然林は開墾破壊され、海産物も乱獲により激減する。
日本は貧しくなって存在感がない。それが日本ダメ論の代表だ。今、世界で言われている存在感とは、経済と武力に裏付けられたランク付けによるものだ。その分野なら、当然のように米中がトップを占めるだろう。
しかし、世界には様々なランク付けがある。文化、民度による評価でのランク付けでは、この10年間、日本はトップを続けている。次の5年間も、トップを続ける可能性は大きい。暮らしやすさは、このランクづけに反映される。
ダメ論に現実感が伴わないのは、数値化できる経済指数での比較だからだ。犯罪、医療、人間関係などの社会ストレスは数値化しにくい。日本はその分野での評価が高く、経済指数との齟齬を生んでいる。
今のままでいいとは絶対に思わない。若年層や母子家庭の貧困は解消してほしい。
行き過ぎた平等思想が、優秀な子供の才能を潰す教育には大きな問題がある。
かっての小泉改革には訳のわからないものが多くあった。その一つが、大学の独立採算制だ。それが裏目に出て日本の科学力を貶めている。その原因は、大学の上層部を文系が占めているからだ。日本を滅亡に導くのは文系支配にある。残念ながら、合理的思考ができる理系は権力欲が薄い。理由は数値とか実績を判断基準にするので、権謀術数の権力闘争に弱いからだ。
実力差による差別教育は絶対に必要だ。
飛び抜けて優秀な天才が、日本では年間1万5千人ほど生まれている。しかし、その殆どは変な子供として差別され、才能は活かされないまま埋もれていく。それを救う制度として、米国で発展しているギフテッド教育がある。それは天才をいち早く見つけて、特別教育をするシステムだ。日本にも少数だが近年取り入れられ、まだ少数だが天才的な子供が発掘され、制度の恩恵を受けて将来が期待されている。
もう一つの教育での期待は、高等専門学校制度だ。それは中学卒業後に進学する5年制の学校だ。科学と技術を融合したユニークな教育で、きわめて実践力があり、100パーセントの就職率を誇る。高専の分野は、日本は世界最高度に進んでいる。だから、アジアの後進国からの信頼は絶大で、留学生の中からも優秀な卒業生を輩出している。
ドローン分野で中国企業が強いのは、ITで優秀な者が多いからだ。だからと言って、彼らが本当に先進的な製品を開発できるわけではない。彼らの能力はITに偏向していて、機械と組み合わせた発想は弱い。しかし、高専出身者はソフトと機械システムを組み合わせて開発することに長けている。これからの優秀なベンチャーは高専卒業生から生まれる可能性が高い。
さらに、東大・京大などに高専から進学する人は多く、現在、企業エリートに、その経歴の人が増えはじめたのは心強い。
日本ダメ論で言われているほど、日本は住みづらい国ではない。
例えば病気治療がそうだ。米国や中国の中流上クラスでも、家族が手術を伴うような少しやっかいな病気にかかると、たちまち破産してしまう。しかし、日本ではたとえホームレスでも世界一流の治療を受けることができる。現代日本人は病気への不安はあっても、医療費の心配は殆どない。しかも医療サービスの質も高い。私は終戦直後の日本を知っている。あの時代の多くの国民は、家族が結核などにかかると、高額な先進医療費を支払えず、悲惨な結末に陥っていた。
それを言うと、必ず欧州のどこそこの医療費は無料だ、との反論が出る。
しかし、医療費無料のフランスを例にすると、皮膚科予約は、たとえば今日11月末に予約を申し込んだら、診察を受けられるのは来年11月末となる。それでは受診拒否とまったく同じことだ。深刻なのは急患だ。待合室で7,8時間放って置かれるのが普通で、治療が遅れて死亡するケースすらある。
医院も指定医院制で、日本のように病院を自由に選べるのは、高額な自由診療を受けられる金持ちだけの特権だ。ヨーロッパの医療費無料の国々では、良い医療を受けられるかどうかは、ほとんど運任せなのである。
カナダ在住の知人も、まったく同じことを話していた。その人は、日本の国民健康保険が適応され、日本国家が支払ってくれるので、支払いの不安はない。しかし、難しい病気にかかっても、自由に優れた病院を選べない。だから、飛行機のビジネスクラスを使って帰国し、日本で治療を受けたほうが遥かに安いと話していた。
日本ではホームレスでも、ヨーロッパの高額所得者並みの医療が受けられる。前述した皮膚科の予約なら、遅くても1週間以内に取れる。もし急ぐなら、待ち時間さえ我慢すれば、その日のうちに治療を受けられる。料金は、通常3割負担だが、年齢を重ねるにつれ2割負担、1割負担と減免される。もし、無所得者なら無料で受けることができる。高額医療費についても、自己負担の上限は低く抑えられている。たとえば月に1000万円の医療費でも、私の所得なら3万ほどの負担で済む。
日本ダメ論の経済アナリストに従えば、経済は絶えず右肩上がりでないと国民は不幸になる。それが正しいなら、世の中が緩やかに安定していた江戸時代は、日本の暗黒時代となる。しかし、江戸時代ほど日本文化が爛熟した時代は他にない。人権も、他のアジア諸国どころか欧州より遥かに尊重されていた。しかも江戸では、廃棄物は紙くず、ボロ布、野菜クズ、糞便まで全てリサイクルされ、ゴミは陶器磁器の破片くらいだった。食器などの割れは、低融のガラス粉で融着する職業があり、庶民は修復して大切に使い続けた。江戸は当時、世界最大の都市なのに、水道が完備し、世界一に清潔な都市だった。
今が最高とは言わないが、コロナの発症者は異常なほどに低く抑えられている。だから、評論家たちが言うほど、日本がダメだとは思えない。
最近「日本企業はEVで、先行する米国テスラや中国企業から大きく取り残され、滅びることになる」との論調が気になる。この考えは科学技術を理解していない文系アナリストの発想だろう。例えば、スマホなどのコモディティ化した製品にはその考えが当てはまる。
しかし、発展途上のEVの世界では全く当てはまらない。もし車載電池が、値段、重量、容積、充電時間が半分になり、電気容量が2倍で、絶対に発火しない安全な電池を車載したEVが販売されたら、一夜にして既成メーカーは淘汰されてしまう。EVについては、トヨタなどの日本メーカは現実的な発想をしていて、とても強い。
先日、丸の内仲通りのクリスマスイルミネーションを見物に出かけた。
そのついでに、丸の内のアップル・ストアでマックの外付けCDプレイヤーを買った。アップル・ストアは日本の電機量販店と雰囲気がかなり違う。ある意味、店員の応対は欧米店の雰囲気に近い。私は別段、愛想の良し悪しは気にしない。きちんと合理的に対応してくれるなら、それでいい。
今回とは無関係だが、これまで数多く都内のアップル・ストアを訪れている。その印象では、おおむねアップルの店員は客の考えをきちんと聞こうとしない。私のディスクトップ型マックPCは8台目で、私はかなりのヘビーユーザーだ。だから、パソコンの知識はかなりあり使いこなしている。しかし、アップル・ストアの販売員は、自分の考えを押し付けようとする。だから、かなり感じは悪い。その上、妙にプライドが高い。それなのに、こちら質問には、合理的にきちんと答えられない。簡単に言えば、彼らの多くは無能なのである。
アップル・ストアは、ショールームくらいに思って行くのがいい。もし、新製品について知りたい時は、ネットで調べるのが一番だ。意外に良かったのは、アップルの電話での商品説明だ。欠点を包み隠さず時間をかけて説明してくれて、インテリジェンスを感じる。
もし、新製品を求める時は、まずネットで調べ、電話で問い合わせて製品知識を得る。そして、実際に買うのは、10パーセントのポイントがつく量販店か、通販がいい。しかし、保証期間内の故障はアップル・ストアがいい。ごちゃごちゃ理由を聞かず、その場ですぐに取り替えてくれるのがとてもいい。
アップル・ストアの後、丸の内の仲通りでクリスマスイルミネーションを見物した。
右手喫茶店の外テーブルでカフェラテ450円を飲んだ。
今流行りの、傘型の遠赤外線ストーブが頭上にあり、私には暖か過ぎた。
誰の死でも心に残る。すでに、年賀状の欠礼ハガキが7通来た。知っている人の訃報はつらい。
しかし、知らない人でも心に残る。
有名人では、先日、瀬戸内寂聴氏の訃報を報道していた。
好き嫌いを言えば、彼女の考え方は嫌いだ。しかし、彼女の死を悼む気持ちは真摯に感じて、寂しさも感じる。歳をとって、大きく変わったのは、誰の死であっても、心から悼むようになったことだ。
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