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2021年12月 9日 (木)

2030年までに日本は半導体少量生産システム(ミニマルファブ)で大逆転。メルケルが犯した大きな誤り。2021年12月9日

80年代初頭から10年ほど続いた日米半導体摩擦で、日本は屈辱的な不平等条約を米国から押し付けられた。そして日の丸半導体は壊滅し、営々と築き上げた最先端技術は隣国勢などに、ただ同然で収奪された。しかし、半導体素材や生産装置生産のほとんど全てを日本が死守して来たのは幸いだった。その結果、日本に大逆転のチャンスが残された。
---半導体生産装置の例外は、最微細化技術のEUV(紫外線)露光装置のみで、オランダ・ASMLが独占している。紫外線露光装置は日本勢も開発済みだが、歩留まり悪いのでその改良の最中のようだ。ただし、EUV関連の、検査、感光剤の塗布、現像などの周辺装置分野は、今も日本勢はシェアを維持している。最先端の紫外線露光連装置の欠点は、高額すぎて、需要が長期拡大するかどうかは不透明ことだ。なぜなら、すでに半導体の微細化が限界に近づいているからだ。微細化は2ナノあたりが限界で、それ以上狭くすると、電子が隣へ漏洩する機能不全が起きる。それ以上の進化は3Dに積層化するとか、量子など全く違う概念を用いるしかないようだ---

スマホやパソコンの心臓部、小型CPU(中央演算処理装置)が花形だと思われている。それは線幅3ナノあたりの微細化技術が結集されたハイテクで、米国インテル、台湾TSMC、韓国サムソンなどが独占している。それらに使われているシリコンウエハーは高価な大口径(300mm)がほとんどだ。しかし、半導体の高利益帯の巨大市場を形成しているのは、ローティクの0.5μmあたりで、シリコンウエハーも安価な5インチ(125mm)以下だ。

台湾TSMCはソニーと共同で、熊本に生産拠点を建設する。それは、対応できる基幹技術と技術者が日本に残っている今のうちに、人・技術の保持のために計画されたものだ。熊本工場はコモディティ化したローテクだと揶揄されているが、日本の戦略は実を取ったものだろう。半導体生産は、製品を必要とする企業が国内にないと進化しない。もし、日本がハイテクの小型CPUを作ったとしても、それを実装するスマホとパソコンは、日本は敗退してしまった。

その点、ローテク半導体を必要とする企業は、自動車をはじめとして日本には大量にある。ローテクの長所は線幅が大きいので耐久性に優れ、誤作動が少ないことだ。例えば自動車に使われている半導体に異常が起きると生死に関わる。自動車用半導体は10年使っても異常が起きない堅牢さが求められる。他の家電なども耐久性が求められる点で同じだ。しかしハイテクは線幅が細い分、高くて耐久性がない。端的に言うと、買い換えサイクルが短いスマホやパソコンなどにしか使い道がない。その点、ローテク半導体は実需に応える質実剛健地産地消の世界なのだ。

台湾TSMCが技術移転が必ず起きる日本に生産拠点を設けた理由は、以下に記した産総研開発の少量生産システム(ミニマルファブ)の完成が影響しているのかも知れない。半導体需要は金額ベースでハイテクとローテクに二分される。ハイテクメーカーは前記したように米台韓の3社が分けあっている。ハイテクへの投資額は最低5000億と巨大で、結果的に利益率は低くなりリスクも大きい。その点、多品種少量生産のローテク半導体の利益率はとても高く、リスクは小さい。

そのローテク半導体の少量生産システム(ミニマルファブ)が、日本に生まれた。それは10年前から、産総研が半導体素材や装置メーカー150社が結集させて開発されたものだ。製品写真を見ると、家庭用冷蔵庫ほどの大きさだ。その装置にクリールームは不要。完全自動化されているので、工場などの片隅に置くことができる。その装置一台で、半導体生産の前工程から後工程まで実現する。しかも、半導体1個から1万個ほどを、極めて短時間に低コストで生産できる。少数生産が重要な理由は、実際の電化製品製造現場の半導体の需要は1万個以下だ。それ以上作っても無駄になるばかりだ。

その開発は、半導体露光装置から素材まで主要企業が全て日本国内にあったから実現した。しかも、素材のシリコンウエハーはコストの安い0.5インチ(12.5mm)を使う。ローティク半導体の回路設計はほぼコモディティ化しているので、CPUのような高度さは不要だ。この装置で、日本は世界の半導体産業利益の半分を得ることすら可能になった。ちなみに装置の価格はハイテク工場建設の1000分の1。ローティク半導体には大量生産の限界があり、生産量がそれを越えてもコストは安くならない。

従来の半導体生産の問題点は、高額製造装置や広大なクリーンルームへの初期投資が巨額なことにある。さらに、生産工程で、生産が停滞する無駄時間が99%以上を占める。対して、この装置では、日本企業が世界一得意なジャストインタイムが応用されているので、半年かかる作業時間が3,4日で完成すると言う。

以上、ミニマルファブの長所だけを記した。当然ながら短所もある。それは、このシステムで生産された半導体価格が高額になりすぎることだ。もし、この装置で10万個を生産できるなら勝機は生まれる。それは、この装置を100台並べれば解決しそうだ。100台でも本格的な生産工場の10分の1の費用だ。あるいは、1台を100回稼働させても同じ結果が得られる。しかし、メーカーはそれらをうまく説明できていない。だから台湾TSMCがソニーと共同で、熊本にローテク半導体生産拠点を建設することになったのだろう。

以上の問題点は、このシステムメーカーも十分に心得ているはずだ。これからさらに投資して、価格要求を満足させるシステムを目指したいだろう。日本に新システムが生まれる時、いつも問題になるのは、国や出資者が開発費を出し惜しむことだ。その点、海外勢は大胆だ。今のままでは、せっかく産総研が10年かけて築いた新システムの利益が海外へ持って行かれてしまう。それだけは絶対に避けてほしい。

「盛者必衰」勝ち続けられるものはいない。
昔、企業内文書は、外部の印刷屋に外注していた。
今は社員がパソコンで編集して、業務用プリンターでカラー写真を交え短時間低コストでプリントできる。
工業試作品でも、キャド-CADで作ったデータを3Dプリンターに入力すれば、高額な外注を経ずに完成できる、
前記の半導体生産装置は、それらと同じ思想だ。
これからは、必要とする半導体を工場の片隅で、3日で生産する時代がやってくるはずだ。

今、米中貿易戦争が起きている。中国は日本半導体の敗退原因を研究し尽くして米国に抵抗している。
日本は世界一の災害大国だ。日本人は生まれながらに荒廃から立ち直るDNAを備えている。このまま日本半導体業界が敗退し絶滅することはない。前記の少量生産システム(ミニマルファブ)は、すでに世界の大手メーカーが注視し接触を図っている。日本は公民協力して、なりふり構わず、利益が出る新システムを開発しないと、死守してきた素材・製造装置の核心技術も、いずれ海外流失してしまう。今は大逆転の最後の機会だと思っている。

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新河岸川河畔、旧居夕景。
上写真右手は、医療施設の集まったビル。

コロナ前、ドイツ在住の知人から聞いた話だ。
ドイツ人は合理的な人種と思われているが、意外に感情的で、しばしば誤りを犯す。その代表が戦前のナチスドイツだろう。今は環境問題でEUを引っ張っているが、その論理的根拠もいい加減で合理性がない。

移民問題でも、EU内の他国は、ドイツに慎重さを求めたが、メルケルは突っ走って、取り返しがつかない文化破壊を起こしてしまった。
メルケルは人権派と思われているが、本当は偏向している。例えば、ウクライナや、ミャンマーなどの人権弾圧には関心があるが、中国のウイグル、チベット、モンゴル族への弾圧には無関心だ。彼女は共産東ドイツの出身なので、中国に終始絶大な親しみを感じているようだ。

ドイツの主要産業でも、メルケルは大きな誤りを犯した。中国による属国化だ。ドイツ企業の中国による買収は、2011〜2020年で377件。ドイツは中小企業大国で、ドイツGDPの50%を、雇用では70%を占める。ドイツの中小企業は、世界のニッチかつ先端技術を担い、省エネ、新エネルギー、電力設備、バイオ、高機能医療器具、工作機械、ロボットなど世界で重要地位を占めている。しかし、日本同様にドイツ中小企業はM &Aに無知で慣れていない。その結果、ドイツ重要中小企業の2000社(ドイツ国内の60%)が中国に生産拠点を置くことになり、急速に重要技術が中国へ移転してしまった。それらの企業は中国2025の実現に大きな貢献をした。そして、中国は2049年までに世界最強国家実現を視野に入れることができた。

2017年、海航集団はフランクフルトハーン国際空港(元米軍基地)の82.5%の株式を買収した。
--注、この買収劇には中国政府内の政争が絡むスキャンダルがあるようだ。海航集団の共同創業者の王健は、翌2018年に南仏プロバンスを観光中に転落死した。そして、2021年1月19日に海航集団は破綻した--

2017年、ドイツのロボットメーカーKUKAは中国の美的集団の子会社化された。
KUKAは米軍機F-35の製造に深く関わっていたので、米軍の重要情報が中国にダダ漏れの状態となった。
その結果、2018年KUKAのCEOティル・ロイター氏はクビになった。
以上の買収劇に、メルケルは深く関わっている。

2018年、吉利汽車CEO李書福氏はメルセデス・ベンツの親会社であるダイムラーの筆頭株主となった。
彼はそれ以前に、BMWの株式も大量取得しようとして失敗したが、証券市場を通じてBMW株を買い占めた。

欧米の多くが、トランプ登場まで、中国は豊かになれば開かれた民主的な国家になると期待し、全面的に支援してきた。
しかし、ファーウェイ問題で明らかになったように、敵対的な国だと分かってきた。
ドイツにとっては、遅過ぎた判断で、2018年にやっと自動車、宇宙、原子力向けの高強度金属製造の重要メーカーのレイフェルドの買収を阻止した。
以上は、すでに欧米で公に報道されたことばかりだ。しかし、今も日本マスコミはメルケル賛辞を続けている。もし、真実を知りたければ、リベラル左派に支配された日本報道を見たらわかる。なぜなら、日本報道の逆が真実だからだ。

それでもメルケルは中国べったりで、毎年頻繁に経済人を引き連れて訪中し、習近平と蜜月だった。
メルケルは経済重視でドイツの利益には貢献したが、長期的には大きな損失を与えている。
2020年12月30日、EU議長国として任期が終わる寸前にEU・中国投資協定を大筋合意させた。メルケル12回目の訪中時、ファーウェイを排除するなら自動車市場を失うことになると習近平から脅され、撤回した。
任期の最後まで、彼女はとんでもないことをしてしまった。これからも、ドイツでスマホを使うと、個人情報が中国にダダ漏れになりそうだ。

ドイツではないが、浙江吉利控股集団は、スウェーデンのボルボに出資した。出資比率は8.2%、議決権ベースでは15.6%を握り、今はほぼ傘下に置いている。

ベンツは、重要部品まで中国生産に切り替わりつつある。
アウディは、すでに中国生産と言われている。

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