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2022年5月25日 (水)

映像の世紀・スターリンとプーチン。テーマ曲「パリは燃えているか」は人の愚かさを露わにする。2022年5月25日

プーチンによる合理性を欠いたウクライナ侵攻は分かりにくい。「NHK映像の世紀・スターリンとプーチン」は特異で、現指導者プーチンをテーマにしていた。そのことに、寺山修司・戯曲「身毒丸」の台詞「話す言葉は偽りでも、流す涙は真実です」を思い出す。なぜなら、映像は言葉を超えて真実を突きつけるからだ。

記録映像から、ロシアに激しく抵抗するウクライナ国民の気持ちが胸に迫る。スターリン支配は極めて凄惨だった。スタリーンは欧州の大穀倉地ウクライナから作付け用種まで徴発し、輸出して外貨を稼いだ。殊に大飢饉が起きた年は、ウクライナ国民は墓場の死体を掘りおこし、母親は子供の一人を殺して他の子供のために調理して生き延びようとした。ウクライナ都市部では、ネズミどころかゴキブリまで食べ尽くされ、300万が餓死した。窮状をスターリンに直訴した党員は、デマを言いふらしたとして粛清され、家族は強制収容所送りとなった。
2000万の自国民を殺したスターリンの残虐性はヒトラーに匹敵する。その事実に目をつぶって、日本の左翼たちは長く、ソ連を地上の楽園として讃え続けた。

54歳で死んだレーニンはスターリンの粗暴な権力欲を見抜いて、後継者から外していた。しかし、スターリンはレーニンの死後、政敵を次々と粛清して政権を手にした。国民に人気があった政敵トロツキーは国外に追放された。
「映像の世紀」にはトロツキーも登場する。彼はウクライナ南部のユダヤ系富農の子として生まれた。スターリンによって失脚した彼は、メキシコに亡命した。彼は画家フリーダ・カーロと関係を持ったが、女性に節操がなかった彼はすぐに愛想をつかさた。その後、スターリンが放った刺客により後頭部にピッケルを打ち込まれ殺された。その刺客は戦後刑期を終え、帰国すると英雄として迎えられた。
トロツキーの身内の多くはスターリン時代に粛清された。皮肉なことに、彼のひ孫はイスラエルで極右活動をしている。

フリーダ・カーロ=1907年〜1954年。メキシコの富裕層の娘で、共産主義に共鳴していた画家。プライドの高いピカソでさえ彼女の作品を評価している。繋がった眉に薄ヒゲの自画像や、少女時代の交通事故後遺症の苦しみから生まれた、自身を切り刻むような強烈な作品を残している。彼女の数奇な生涯は幾度も映画化されている。

独ソ戦で、ウクライナは短期間だけソ連から解放された。しかし、ドイツ敗退後はドイツに協力したウクライナ国民の大粛清が始まった。300万国民を餓死させた略奪と戦後の大量粛清。この負の歴史を知れば、ロシア軍への激しい抵抗は理解できる。
その一方、ウクライナとロシアは近似していて、姻戚関係にある両国民も多い。スターリンを崇敬しているプーチンは、ウクライナを手に入れ、ソ連邦のような大ロシアを実現させようとしている。陰謀、暗殺、粛清を駆使して得たプーチン大統領への道筋は、ヒトラー・ナチスに酷似している。スターリンは内心、独裁者としてのヒトラーに親しみを感じていた。プーチンもその言動に反して、ヒトラー独裁に近親感を抱いているのかもしれない。

「映像の世紀」のテーマ曲、加古隆「パリは燃えているか」と「プロジェクトX」のテーマ曲、中島みゆき「地上の星」は対極にある名曲だ。
前者は人の愚かさを露わにし、後者は無名の人たちに光をあててくれる。
「連夜の開発作業に疲れ果てた時 "地上の星"を聴くと気持ちが奮い立った」
昔、医療機器部品を作る小さな企業の開発部にいた知人の言葉だ。開発は成功しても利益は小さいが、確実に人類に貢献するとの思いが彼にはあった。

「パリは燃えているか」を聴くと、人の愚かさが悲しく胸に迫る。
しかし、大地震で破壊された神戸の市街地や、津波が襲う三陸に重ねても違和感を感じるだけだ。それは人の愚かさではなく、相手がいない天災だからだろう。一方、人の愚かさが生み出したコロナ禍に対しては、この曲はピッタリと重なる。
「全国民にPCR検査をしろ」と、お昼のワイドショーで息巻いていたマスコミ人がいた。さらに、彼らはコロナ禍における独裁制の優位を語ったりした。しかし、PCR検査を大量に実施した上海と北京ではコロナは止まらず、極端なロックダウンにより餓死者まで続出させた。そのような歪んだ報道の煽りの結果、日本のコロナ死者が招いた一人当たりの経済損失は欧米の10倍以上に達した。今、コロナはオミクロンに変異して、ただの流行病に変化しつつある。それなのに日本経済は淀んだままだ。その現実を前にしてもマスコミ人は目をつぶって反省しない。
日本の政治家、経営者、マスコミ人の多くが中国におもねっている。彼らが消えて、NHKが「映像の世紀」で、コロナ禍や現代中国の裏面を描き出すのは、遠い未来になりそうだ。

テーマ曲・加古隆「パリは燃えているか」は歴史のリトマス試験紙だ。
この曲を映像に重ねて心が深く揺り動かされるなら、それは人の愚かさが引き起こしたからだ。

「映像の世紀」で、プーチンがKGBに入ってスパイを目指したのは、1961年6月21日公開の日仏合作映画「スパイ・ゾルゲ真珠湾前夜」を見たからだと彼自身が口述している。ゾルゲはソ連が戦前日本に送り込んだスパイで、第二次大戦で大きな役割を果たした。映画は、岸惠子がゾルゲの日本での獄中手記を読んで企画を立てた。そして、夫で映画監督イヴ・シャンピに映画化を勧めて完成した。
もし、この映画が製作されなかったら、確実に世界の歴史は変わっはずだ。彼が権力を上り詰められたのは、KGBの経歴が大きく役立っている。もし、プーチンがこの映画を見なかったらKGBを目指すことはなかったかもしれない。彼は平凡なインテリとして、ロシアの短い平均寿命ではすでに天寿を終えていたはずだ。

彼が大統領を目指してた頃、ロシアでは無差別テロが頻発して300人以上の犠牲者が出ていた。当時、私もそうだったが、ほとんどの人はテロはチェチェン人が起こしたと信じていた。しかし、英国に亡命していた元ロシア情報員は「テロはプーチンの仕組んだものだ」と暴露した。その情報員はすぐに、プーチンの指令で毒殺された。
今回のウクライナ侵攻同様に、プーチンはチェチェン国民を大量に殺した。西側は「チェチェンはテロ国家だ」とのプーチンのプロパガンダを信じ、チェチェン支援をしなかった。そのような手段を選ばない手法で、プーチンは大統領選で圧勝した。

番組最後に、米国に亡命していたスターリンが溺愛した娘・スヴェトラーナの言葉があった。
「幾百万の非業の死を遂げた犠牲者たち、彼らの屍を踏み台にし、悪の手段で善を打ち負かそうととした者たちは、一体、何を手にしたのたのだろうか。歴史の審判は未来の人たちにまかせよう。彼らにとってあの時代すべては不可解で、戦慄を誘うほどに恐ろしいものとなるだろう。果たして彼らは私たちの時代を"進歩"の名で呼んでくれるだろうか。"偉大なロシアの幸福のため"だったと呼んでくれるだろうか。」
皮肉にもプーチンは「偉大なロシアの幸福のため」にウクライナを侵攻した。本当に歴史は繰り返される。日本が愚かさを繰り返していないのは、世界史上極めて稀なことだ。

余談だが、スターリンは少年期に靴作り職人の徒弟になった。彼は靴作りが好きだった。公務に疲れると、執務室隣に設けた作業部屋に籠り、スヴェトラーナの為に靴作りに励んだ。スターリンの靴作り職人の部分だけは、唯一人間味が残っている。

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5月21日、荒川土手から南方角に夏のような積乱雲が見えた。
深夜に雷鳴とともに驟雨がやって来た。

22日の黄昏時、写真方向に流れ星を見た。
それは川口の夜景を眺めてから振り返った一瞬だ。
無音で仰角10度ほどを水平に飛んだので、流れ星だと分かった。
何か良いことが起きる予感がしてとても嬉しかった。

23日
スーパー外のベンチで休んでいると、近くに顔見知りのおばあさんが腰掛けた。
会釈すると満面の笑顔になった。

2年前に最初に会った時、彼女は歩道を杖をついてトボトボと歩いていた。ビックリさせて足がもつれないように、声をかけて脇を追い抜いた。すると彼女は「ぐずぐず歩いていて、ごめんなさいね」と笑顔でこたえた。明るいブルーのコートに花模様のブラウス、お洒落な年寄りだと思った。そのような、明るいおばあさんを見ると母を思い出す。

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89歳から96歳まで、毎日のように赤羽自然観察公園へ車椅子で連れて行って、園内を散歩させた。
母の上着は、昔横浜のアジアンマーケットで買った、中国の古い藍染の型染め綿布だ。
母はそれを自分で仕立てて、愛用していた。
とても丈夫な綿布で、中国の昔の農民は幾代にも渡って、ボロ雑巾のようになっても受け継いで着ていた。

彼女は痛めていた腰が悪化して、最近は4輪の買い物カートを使っている。4輪はブレーキが付いていて安定しているので、杖代わりになる。彼女は買い物した品をベンチに並べ、詰め直していた。そのゆっくりした動作がとても懐かしかった。歳をとると、みんな同じようになるようだ。

最近、悪い円安と言われているが、インフレ率は欧米よりずっと小さい。
日本観光人気が世界一になった。6月から緩められる観光訪日に備え、世界各国で円への両替が増えている。ちなみに1万円札の製造原価は20円だ。何も輸出していないのに、両替額だけ外貨収入があるわけだ。こんなに良いことはない。

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