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2022年8月 7日 (日)

人生の逆張りは我が家の伝統だ。私もその血に翻弄されながら終わりを迎えそうだ。2022年8月7日

両親共に人生の逆張りが大好きだった。
母は一本気に世間に逆らっていた。
父はチマチマと利益追求するくせに、大事なところで逆張りして大失敗していた。
母一番の逆張りは、ダメ人間の父と結婚したことだ。
母は度胸があって頭が良くて、長身で女優に間違えられるくらいの美人だったのに、ハゲでチビで失敗ばかりしているダメ人間の父と結婚した。

母の車椅子を押していた時、死んだ父のことを母がぼやいた。
建設技官をしていた父は、もう少しで恩給がつく寸前に、上役と喧嘩して辞職し、会社を起こした。結果は大失敗で、借金返済に母は追われた。その後も、父は次々と会社を起こしては失敗を続けた。父の終わりの頃の失敗の尻拭いは私がした。
だから、母がぼやく気持ちはよく分かっていた。
「ダメ人間だったけど、今、車椅子を押して世話しているのは、その子供の俺だよ。ダメ人間の父親と一緒になったから、俺が生まれたんだ」
私は一般女性より家事能力は高かった。そして、心身ともにタフで、職業は24時間介護できる絵描きで、私以上に優れた介護人はいなかった。母はすぐに私の言葉を理解した。
「そうだったね。考えもしなかった」
母は空を見上げて「ごめん、ごめん」と父に謝った。
それから母は、父の悪口を一切言わなくなった。

私は両親の絵の才能の良い部分だけを受け継いで、絵描きになれた。
私の繊細な感覚は父方から、大胆な感覚は母方から受け継いだ。
あらゆる意味で、母の逆張りは大成功していた。

私も逆張りが大好きだった。
その最初の明確な記憶は、高校2年の全校マラソン大会でのことだ。
マラソンといっても走るのは10キロ。
1年の時の順位は全校2位だったので、翌年の、その大会ではトップを狙った。
そして、7キロ地点まで順調にトップグループを保った。
しかし、なぜか、突然に逆走したくなって実行した。
逆走し始めると「あいつ、またバカ始めた」と、すれ違う友人たちが私を見た。
1キロほど逆走してから再度ゴールへ向かい、100位前後でゴールした。

今考えても理由は分からない。
あえて言えば、両親から受け継いだ血がそうさせたと思っている。
それからの人生も、逆走を繰り返した。
逆走しなくなったのは、つい最近のことだ。

しかし最近、ささやかな逆走をした。
契約しているホームページが余っているので、それを利用して、絵描き友達の菊池氏の作品集を作りはじめた。
大きな画像データやテキストのやり取りはGmailが便利だ。
しかし、彼のGmailに不具合が起きた。
それで、Facebookのメッセージを代用した。
Facebookへの投稿は10年前から止めていたが、メッセージのやりとりのため、毎日、トップページを開いた。
すると、タイトル画像が消えてグレーの汚い画面に変わっていた。
我慢できないので「おじいちゃんのバス停」の絵をトップ画像にUPした。すると、勝手にトリミングされた画像が表示されて、気に入らない。それでもう一枚UPした。すると同時に、その2枚の絵は投稿扱いになっていた。そのように、勝手にやってしまうところが、FBの嫌なところだ。
投稿となれば、コメント欄が付く。
コメントを入れるのは大好きだ。
その時、逆張りの悪い癖がムラムラと湧き上がった。
そして、以下のようにコメントした。

「20年間、心血を注いで絵本「おじいちゃんのバス停」を完成させました。星五つ満点で星二つの低評価をいただいたくらい価値がない絵本です。Kindle会員は0円で購読できますが、0円でも誰も読んでくれません。だから読まない方がいいです。時間の無駄です」
その後にAmazon Kindle電子図書へのリンクを入れた。
ネガティブだが、本心では売れることを期待していた。
いわば、ネガティブキャンペーンだ。
例えば、映画初主演女優の売り出しコピーで、
「ちっとも可愛くなくて、いつも不機嫌で、嫌な性格の女です。絶対にこの映画は見ないでください」
すると、どんなに嫌な女優だろうかと注目される。
もし期待が外れて注目されなくても、面白いネタが一つできる。
どちらに転んでも悪くはない。

コメントすると早速、地方都市の中年女性からメールが届いた。
「そんなことはありませんよ。とても立派なご本です。明けない夜はありません。めげずに頑張ってください」
「あれ、まともに読んでしまう方がいるんだ」
と思った。しかし、彼女はとても真っ正直な人だと、すぐに分かった。
ほとんどの人は、絵本の宣伝だと思い込み、このコメントの核心部をきちんと読んでいなかった。
私だってそうだ。コメントのKindleリンク画像を目にしたら「買って!! 買って!!」のお願いだと思い込んでしまう。そして「上手くいって良かったですね」とか「いいね」とか記入することになる。

本当は気の利いた戯言を期待したのだが、実際は早とちりと「いいね」が溢れていた。
肝心のコメントの成果は、残念無念にもまったく既読数は伸びず低迷したままだ。
ちなみに、Kindle Unlimited 会員数は私の推測では日本では40人に1人くらいだ。
このブログの読者では、若干多い30人に1人くらいだろう。

父方の逆走・・・
先祖伝来の墓は福岡市の警固の寺院境内にある。
4歳の頃、死んだ祖母の納骨のために行った記憶がある。
終戦直後の物資不足の時代で、蝋燭を買うのに父は腐心しいていた。手に入れたハゼの実から作った太い和蝋燭の和紙の芯は、木版刷りの古紙が使ってあった。その時、仏具屋で買ったエボナイト製の赤い高月は今も使っている。素材は安物だが、仕上がりがとてもよく73年を経た今も艶々と、どこも痛んでいない。

その墓は1メートルほどの高さの緑紋岩(父からの伝聞)の自然石でできていた。
専門家に聞くと、理由は分からないが、緑紋岩は絶対に墓石に使わない石らしい。
もしそうなら、逆張りばかりしていた父方の性格そのものだ。

逆張りの性格が幸いしたこともある。
黒田藩の下級武士だった祖先は、明治維新で勤皇方につき、巧く立ち回って出世した。その祖先は立派な門構えの屋敷に住んでいた、と母は話していた。維新で高級武士が沢山零落してしまい、屋敷を手に入れるのは簡単だった時代だ。

父はよく、祖先は勤皇の志士だったと自慢していた。しかし、武闘派だったとは思えない。国学を極めていたことは確かなので、文系勤皇の志士の傍流だろう。そうだとすると平安貴族に憧れ、顔を白塗りして横笛なんか吹いていたかもしれない。その姿を父に重ねて想像すると、とても気持ちが悪かった。

墓石を父は「他にはない立派な墓だ」と自慢していた。
他にはないのは当たり前だ。
「常識はずれだ」と石屋に反対されたかもしれない墓だ。
貧しい母子家庭に費用はなかったはずなので、本家の誰かが建ててくれたのだろう。
だから墓は、墓地の中の上くらいの微妙な位置にあった。
墓石については、実際に墓を見た記憶では蛇紋岩に近い。
墓に使わないのは流紋岩なので、父の記憶違いだろう。

出世した家の出の祖母が母子家庭になったのは、京都から来た友禅職人に孕まされて父を産み、一族から弾き出されたからだ。父なし子となった父は一族の恥で、同じ姓を名乗るのを嫌われたはずだ。それで父は幼い頃に、まったく血のつながりがない遠縁の、男子が絶えた「篠崎」の姓を継がされた。
もし「篠崎」の姓に家督の一部を付けてもらえたら、父は裕福になったはずだ。本来の「篠崎」はかなりの資産家だった。しかし、根も葉もない恨みをかって家族のほとんどが殺され、幼い女の子だけが生き残った。

50年前、その生き残った女性が九州から我が家を訪ねて来た。
父はその白髪の老婦人に「ねえさん、ねえさん」と大喜びして、ちぎれるように尻尾を振っていた。父が「ねえさん」と呼んでいたのは、その人の弟として「篠崎」を受け継いだからだ。母は台所でお茶の支度をしながら「とおちゃんは情けない。金持ちだから世辞ばかり言って」と苦笑していた。

私は悪運が強い。幾度も幾度も絶体絶命から逃れて来た。ある日、ふと気づいた。殺された篠崎の人たちの霊が「血の繋がりがないのに、よくぞ篠崎の名を保ってくれた。ありがとう」と守っていると信じている。その悪運の強さは今も続いている。

4歳の時に訪れた警固の寺の境内の墓地は、空が広かったと記憶している。
しかし、成人してから行ってみると、すぐそばまでビルが迫り、暗くジメジメした印象がした。
その墓は、30年ほど昔、取り壊され、お墓のアパートに変わった。
母は移転分担金を払い、盆暮れに維持費を送っていた。
しかし、母が死んで貧乏絵描きの私の代になってから、維持費は滞った。
だから、今どうなっているかは知らない。

今、寺の境内に残っている露地の墓は、裕福な檀家のものばかりだ。
以前、地震空白地帯の福岡で大きな地震があった。
地震の時、その寺での法要を撮影していた人がいた。
その動画はNHKで流れた。それが、私が見た最後の境内風景だ。

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「おじいちゃんのバス停」から
近くの丘を登ってみた。すると キツネが  おじいちゃんの植物図鑑を読んでいた。
ぼくはビックリして、体が動かなくなった・・・
絵本へは左サイドからリンク。

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