« 「比較することで不幸になる」荘子。私は母方からアウトサイダーの気質を受け継いだ。2022年8月18日 | トップページ | 運気の流れは些細な行動で変化し幸運を招く。カラシ・玉ねぎ・鰹節・納豆の組み合わせは最高の健康食品。2022年8月23日 »

2022年8月19日 (金)

銀座での個展の、非日常な出来事三話。2022年8月19日

14年前、銀座山野楽器裏での個展の思い出だ。
絵が売れると、近くの店でマフラーなど洋装小物を買っていた。
それを4,5年続けていたら店の社長と顔なじみになった。

その日は社長は留守で、大学出たての小太りの二代目が店頭にいた。
イタリア製のお洒落なストールを眺めていると、二代目が誇らしげに説明を始めた。
彼の口調には「お前はこんな高いものは買えないだろう」と言った雰囲気が漂っていた。
しかし、その小生意気な態度が逆に、とても楽しかった。
「さすが銀座の若社長!!  博識!!  えらい!!  立派!! 」
私は太鼓持ちのように、思いつく限りの褒め言葉を並べた。
二代目は「恐れ入ったか」とばかりに、さらに調子に乗って語り続けた。
私は間合いを図って、おだてるのをやめた。
そして、彼の値踏みに合わせて安い小物を買った。

商品を受け取りながら言った。
「若社長 さすが偉い!! いーいパンツ はいている!!」
二代目はキョトンとして、不思議そうに私を見た。
「何でもない、何でもない」
私は笑いを我慢しながら出口へ向かった。

出口のガラスに、二代目の姿が写っていた。
ズボンを見下ろした彼は、チャックが全開になっているのに気付いた。
すぐに身をくねらせ 大慌てでチャックを上げた。
通りに出ると、それまで必死に我慢していた笑いが、どっと吹き出した。

その後、買い物は他の店に変えた。
若社長と会うのが気まずかったからではない。
絵が売れない時代に変化したからだ。

それから10年以上経て、時折、店前を通ると、さらに恰幅が良くなった二代目の姿が見えた。
生涯、彼はあのような失敗はしないだろうと確信している。

しかし、かく言う私も、同じ失策をしばしばする。
先日「今日はいつもより皆んなに注目されている」と思ったら、ズボンのチャックが全開だった。

個展二話

「只で 見ても良いのでしょうか」
終わり近くに入ってきた若い女性が、消え入りそうに聞いた。
「どおぞ、どおぞ」と招き入れると、彼女は怖ず怖ずと会場を一周して芳名帳にサインして帰った。住所を見ると向島とある。下町には、そのような浮世離れした人がいるようだ。

会場を閉める寸前に入ってきた若いアベックは「靴のままで良いでしょうか」と聞いた。
会場の板床は入口から上がり框のように一段高くなっていたので、誤解したようだ。
見た目は今流行の最先端若者たちなのに、そのような素朴な質問をしたことに驚いた。

大昔、初めて都会のデパートへ行った時、幼稚園生だった私は同じことを受付嬢に聞いた。
更に、エスカレーターの乗り口でエスカレーターガールに「お金がいるのか?」と聞いた。
同行した親戚の女の子は「恥ずかしい」と、思いっきり嫌な顔をしていた。
当時はエスカレーターにも担当の制服女性が立っていて、移動手すりに着く手脂を、丁寧にタオルで拭き取っていた。
D1
子供の頃、実際に田舎の子どもたちはこのような口調で話していた。

個展3話

午後2時に個展会場に行った。
来客はなし。
退屈していると、ラテン系の若い男女が入って来た。
「ファンタスティク。ビューティフル」と褒める。
嬉しくなって、貰い物の栗落雁をあげた。
「何処から?」
聞くと「コロンビア」だと言う。
「落雁が美味しい」と言っていることだけは分かる。
しかしスペイン語は、さっぱり分からない。
困っていると、次に入って来た50歳ほどの男性が二人の会話に頷いていた。
「できますか?」
聞くと、嬉しそうにうなづいた。
そして、流暢なスペイン語で通訳してくれた。
それによると、二人は歌舞伎座の帰りに何となくこの画廊に入った。
女の子は20前後でとても可愛い。
生成り無地のTシャツにさりげなく、カモメをデザインしたダイヤのブローチ。私は絵描きに転向する前、宝石を扱っていたので、本物だとすぐにわかる。
男性も同じような生成りのTシャツ。
二人ともブランドもののデニムパンツにスニーカー。
小粋で、昔大ヒットした「ウエスト・サイド物語」のニューヨーク下町の雰囲気を漂わせている。
もしかすると、コロンビアマフィアの御曹司かもしれない。

若者たちは私に握手を求めて、嬉しそうに帰って行った。
そのあと、通訳してくれた男性が話した。
「自分はスペインに赴任していました。
30年ぶりに帰国して銀座を歩いていると、どこからともなく懐かしいスペイン語が聞こえました。辿って行くとこの画廊です。引き込まれるように入ってしまいました」
男性は丁寧に感謝を述べて、帰って行った。

絵はまったく売れる気配はない。
しかし銀座では、そのような非日常な出来事が起きるから楽しい。
その思い出深い「ギャラリー・オカベ」は、コロナ禍が始まった頃に、閉廊した。

26_bus
「おじいちゃんのバス停」から・・・
山の頂上には山バスの停留所があった。
左サイドバーからリンク。

Ma_3

Ma_4

Ma_5

Mas

|

« 「比較することで不幸になる」荘子。私は母方からアウトサイダーの気質を受け継いだ。2022年8月18日 | トップページ | 運気の流れは些細な行動で変化し幸運を招く。カラシ・玉ねぎ・鰹節・納豆の組み合わせは最高の健康食品。2022年8月23日 »