幸運は忘れた頃にやってくる。日本は昔から、断トツのEV大国だった。2022年10月16日
絵描きは運まかせの仕事だ。だから運気を上げるために、宗派を問わず神様に敬意を払う。もしモスクがあったら、アラーへも祈るだろう。
縁起が良い品も揃っている。3メートル近い、頭から尻尾まで一箇所の欠損もない青大将の抜け殻は、桐の箱に樟脳と一緒に大切にしまってある。9月、鬼アザミの綿毛が舞っていたのを捕まえた。そして「これはケセランパサランだ」と自分に言い聞かせ、白粉と一緒に箱にしまった。白猫黒猫の招き猫は住まい中に飾ってある。何十回と繰り返した生活の危機を何とか乗り越えてきたのは、そのような深い信心のおかげだと思っている。
振り返ると、幸運は何かに熱中して「幸せ願望」を忘れた頃に訪れた。幸運を必死に願っている時に、訪れたことはない。新作「風はいつも見守っていた」の中で風は「何も考えるな」「後ろや 前ばかり見ていると、転んでしまうぞ」と老人に語りかける。あとで考えたら何のことはない、これは私自身への戒めだった。幸運について言うと、行動とか仕事とかしても「成果は考えず、やったことを忘れてしまえ」と言うことだ。
幸せの神様はへそ曲がりだ。洪自誠作・菜根譚に「幸せのために、あざとく謀をする者に、神様は禍を与える。清廉で、あえて幸せを求めない人には、幸せを与える」とある。何も求めず、一生懸命に生きている人に幸運は与えられるものだ。
そのように立派なことを言っている私自身、大変な絵描きの仕事を選んでしまった。3年続いたコロナ禍で日本の美術市場は冷え込み、私の作品を取り扱ってくれた画商2軒が廃業し、画廊一つが閉鎖した。大変なのは絵描きだけではない。音楽家も物書きも役者さんも苦境にある。
絵描きに転向した頃、御茶ノ水大で中国学を教えている中山時子教授宅に報告に行った。
「あなた、豊かで安定した仕事があるのに、どうして絵描きなど選んだのですか。とても悲惨な仕事ですよ」
彼女は猛反対した。
私は、たった一回しかない人生を、生活するだけのために費やす方が悲惨に思えた。だから、彼女の忠告など耳には入らなかった。
彼女は北京生まれで、北京大学を卒業したあと終戦を迎えて引き上げて来た。その時、敗戦下の大変な苦境にあったが、東京大学が女子入学を許したので、即受験して入学した。彼女はその時入学した3人の女性の一人だ。
彼女は満洲経験がある母と馬が合っていた。それで、中国の珍しい食品が手に入ると母に連絡が入り、私が受け取りに出向いていた。強烈に臭い臭豆腐や、今も珍しい中国ハムの名品をくれたのも彼女だ。絵描きを反対されてから、私は彼女の住まいを訪ねることはなくなった。
亡くなる数年前、彼女から電話があった。通り一遍の会話をして電話を切った。今思うと、もっと親身に話をすれば良かったと後悔している。
母の交友関係は、他にも経済界の重鎮の奥さんたちなど特異な人が多かった。
その人脈を活かしたら、絵描きとして成功できたかもしれない。
しかし、私は世渡りが超絶に下手だった。
私のガラケー。卵焼き模様をマニュキュアで入れた。
EVはElectric Vehicleの略で、電気で走る車両のことで自動車に限定しない。多くの人は気付いていないが、電車もEVの範疇に入る。現在、首都圏の6割近くの人が移動手段として電車を使う。昔はもっと多く、8割は使っていた。この比率はダントツの世界一だ。それは、首都圏4,434万人の半分以上が移動手段としてEVを使っていることになる。しかも、エネルギーロスが多く、生産性も悪い電池式の車ではなく、極めて省エネの車だ。電車は架線とレールから直接電力が供給されている。私が上京した頃は、路面電車とトロリーバス路線がくまなく張り巡らされていて、今よりEV比率は高かった。それなのに、国内外の環境保護活動家は、EV比率が低いと日本を非難している。これはとんでもない濡れ衣だ。関係者やマスコミは、もっと強く反論してほしい。
「風はいつも見守っていた」は電子図書版の貢献で、 Amazon Kindle 民俗学部門で連続して上位を維持している。
私は、電子書籍を0円入手したお客さんの一定数が、ペーパーバック版も買ってくれると期待していた。しかし、実態は大きく外れていた。電子書籍版「風はいつも・・」を入手した人のほぼ100%はペーパーバック版を買わなかった。ペーパーバックを買ってくれた人は、初めから電子書籍に興味がない人たちばかりだ。
電子書籍では、何十万と既読数が伸びないと利益にならない。私の既読数では、月に入るのは子供のお小遣い程度だ。
だから、紙の絵本、ペーパーバック版が売れないとまずい。紙の絵本なら、人がそれを見て欲しくなったりして、横の広がりが期待できる。電子書籍にはそれがない。一旦消えると再浮上は極めて難しい。その対策として、月一のペースでKindle作品を出して、それにつられての復活を狙っている。
非常に残念なのは、Amazon取扱本の中でペーパーバック比率は少ないのに、ペーパーバック版上位を、きわどいヌード写真集が占めていることだ。Amazon Kindleの担当者も、この実態を改たいだろう。だから、真摯に挑戦する作家には好意的だ。
今のまま、座して敗退を待つことはできない。
次の作品を10月末か11月はじめにアップロードする。
生活ができるかぎり、何作でも挑戦するつもりだ。
「風はいつも見守っていた」ペーパーバック版の3度目の色校正を終えて、本が届いた。表紙も本文画像もほぼ狙っていた色味で、安堵している。ついでに、レイアウトや文体のおかしいところも修正したので、品の良い大人向けの絵本に仕上がっていた。
夜中、外に出ると、雲間に上弦の月が浮かんでいた。
月の周りには珍しいほど多くの星が煌めいていた。
「これからどうなるんだろう」と月を見上げながら思った。
題名は「何処へ」かってのサッカー日本代表のトルシェ監督が買い上げた作品。
現在、フランスの彼の母親所有の城に飾ってある、と聞いた。
自分は「何処へ」辿り着こうとしているのか、そのぼんやりとした気分を描いた。それは今の気分に似ている。サイズ50号。画像下部左寄りの開口部に佇むのが私。地平線の建物まで、濃密に描き込んである。
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