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2022年10月20日 (木)

日本は経済指標として評価されない数値が多い稀な国家だ。文章の掴みは最初3行にある。2022年10月20日

コロナ緩和で、海外観光客が急増した。円安でホクホク顔の彼らを眺めていると、気分が温かくなる。しかし、経済評論家は眉をひそめ「日本爆買いを、複雑な思いで眺めています」と決まり文句を言う。円安に問題があったとしても、日本が米国の高金利政策を追従できる訳がない。語られないが、円安には多くの利点がある。現在、日本政府保有の外貨建て債権が爆上がりして、国民に発表していない莫大な利益を得ている。GDPも爆上がりするたろう。しかも、歴史的な円安なのに、日本のインフレ率は欧米と比べて数分の一と低水準だ。例えばガソリン価格は、日本170円辺りに対し英国は300円を超している。数日前のハワイ取材では、おにぎり一個が600円だった。ニューヨークのワンルーム家賃は50万を軽く超えている。日本の物価対策は意外に健闘している。

日本は経済至上主義ではない特殊な国家だ。日本は30年も収入が増えない停滞国家だと言われ続けているのに、デモも暴動も起きない。バブル期のような贅沢はできないけど、生活に不自由するほど貧乏でもない。外国人観光客の楽しそうな笑顔を見ていると「停滞国家と簡単には括れない」と言いたくなる。その理由は、近年の日本人の一番大切なものが、お金とは違うものに変化しつつあるからだ。世界の潮流である経済至上主義を外れ、日本は、確実に違う方向に進化し始めている。

日本人が海外への個人旅行を躊躇する理由に、トイレや飲み物食べ物の不潔さがある。団体旅行なら旅行会社が配慮してくれるので、それほどの不自由さは感じないで済むが、個人旅行となると覚悟が必要となる。
日本国内旅行は別格だ。数年前、秩父に行った時、辺鄙な山奥に建てられた公衆トイレは、地元産木材で作られたログハウスで、清潔な温水洗浄便座が備えられていた。海外では有料トイレであっても、極めて劣悪だ。水道水が安心して飲めるのは、アジアでは日本とクエートくらいのものだ。

ほとんどの日本人は外食した後、テーブルの汚れを拭き取って席を立つ。中国人だとテーブルも床も汚し放題にして立ち去る。彼らは食事代に掃除の費用も含まれていると考えているからだ。日本人は違う、国民全体が、ほんの少しだけ手をかければ、社会全体の負担が激減すると考えている。だから、日本の街では海外ほどに掃除人を必要としない。

安全もそうだ。米国の高級住宅地は、厳重な塀で囲まれ、銃をもった警護員が24時間パトロールしている。当然ながら、住民には高額な負担金が生じる。南米には、100m先のパン屋へ行くのも命がけのところがある。ロス在住の友人は、200m先のスーパーへ行くのに犯罪に遭わないように車を使うと話していた。
そのように安全な日本では、住宅への防犯費用が少なくて済む。アジアを含め、海外住宅は窓に鉄格子を入れるなど、極めて頑丈に防犯に費やしている。

海外の若者たちが、日本の子供たちの自由な生活を羨んでいた。米国では、子供たちだけで連れ立って、電車に乗って遊園地へ行くことなどあり得ない。必ず、外出には親が付き添わないと法律で罰せられる。子供たちだけでの留守番も許されないので、ヘビーシッターを雇わなくてはならない。登下校は、防犯対策から、どんなに学校が近くても通学バスを利用する。

日本人の多くは、自由で楽しかった子供時代の記憶を持っている。しかし、ほとんどの米国人にはそのような記憶はない。米国のスーパーの壁一面には、行方不明捜査を依頼する子供の顔写真が無数に貼られている。社会には経済指標に現れない数値がある。それが、自販機がどこにでも設置できて、道路にゴミが少なくて、医療費が安くて信頼できて、女性が夜道を一人で歩けるような民度だ。

そのように日本は生活コストが低い国なのである。国がそうしてくれたわけではなく、自助努力の民度によるものだ。海外観光客たちの穏やかな笑顔は、安全で静かな日本の環境がもたらしたものだ。だから、30年間収入が増えなくてもデモも暴動も起きない。インフレ抑制、安全対策、清潔さなどを金銭で評価したら、日本人の実質賃金はかなり高額なものになるはずだ。

ひさしぶり青空が広がった。土手道の風は冷たい。真っ先に桜の紅葉が始まった。
街中はTシャツ姿もいれば、ダウンコートもいる。今は気温対応が難しい季節だ。私は洗濯物がよく乾くのが嬉しい。暖かい日差しを背に受けていると、幸せいっぱいになる。

左足の激痛と奥歯の痛みは消えた。9月、眠れないほどに左足に激痛があった。連鎖して奥歯を痛め、食べることができずに急速に体力低下を招いた。大袈裟ではなく自分の死を間近に感じた。その経験で、老いに対する過信が吹っ切れた。誰でも自分だけは死なない・バイアスがかかる。しかし今は、人は普通に死ぬものだとリアルに覚悟している。
だから、作り溜めて来た作品の電子書籍化に熱中している。ほんのわずかしかお金にはならないが、少なくとも、私の作品の痕跡は残る。宮沢賢治は膨大な作品を残しているが、それらが広く知られたのは死後かなりの年月を経てからのことだ。ゴッホに至っては、まったく売れないままに、絶望のうちに自死した。彼らより自分は、ほんの少しだけ幸せだと思っている。

散歩道でマスクをしている人は激減したが、街中ではほぼ100%マスクをしている。たまにマスクをしていない女性は、やはり美人が多い。目元だけを見ていると美人なのに、口元があらわになるとそうでもない人が多い。この様子ではマスク依存症の人は一定数残りそうだ。

最近気づいた法則。
豊かな国は戦争を始めない。
ロシアがウクライナを侵略したのは、ロシアが経済的に行き詰まっていたからだ。中国は外目には豊かだが、内実は厳しい。だから、こちらも侵略戦争を始める要素がある。

電子書籍化で学んだこと。
絵は抵抗なく誰でも見てくれるが、文は違う。誰もが読んでくれるのは最初の3行までだ。その3行が魅力的なら、そのあとも読み進めてくれる。
それに関して、純文学の知人が、著作を人に読んでもらうのは難しいと話していた。例えばブログは、最初の3行でジャストミートしないと逃げられる。だから、核心に入るまで行数を要する純文学はブログ向きではない。その点、絵は生理的に許せるなら誰でもすぐに見てくれるからうらやましい、と話していた。

昔の日本文学は短く表現した。
純文学の彼は源氏物語での3行を、10ページほどに水増しできると話していた。「水増し」は自虐的だが、明治に入って来た西欧文学によって、詳細長大に表現する手法が行き着き、特殊なまでに変化したのが純文学の世界だろう。

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電子書籍・ペーパーバック「風はいつも見守っていた」掲載のメリーゴーランド。
記憶にある複数の遊園地を1枚にデフォルメ合成した。
原画は先に掲載した「海辺の街」と共に上越市の樹下美術館蔵。
「風は・・・」の原画の大半は、絵本完成前に売り生活費に消えた。
本が完成する前に、絵描きが原画を売ることは珍しくない。
原稿用データ保持のため、昔は撮影所に持ち込み、4×5のポジにしてもらった。当時のラボにはデザインや出版関係者が列をなしていたが、ラボ自体が消滅した。今はスキャナーによるデータ化が主流だ。

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