明月記の超新星爆発と人生の砂時計。2023年10月25日
ネット上で一番使われているのは英語だ。
そして2位は日本語。世界の70分の1の日本語が2位とは驚きだ。
それは記録大好きな民族気質のせいだ。
世界の科学界では、古代の気候を知るために日本語の日記は重要な資料になっている。
日記の代表は藤原定家の明月記だろう。
それは1180年から1235年まで56年間の克明な記録だ。
記述は政治・事件・気候・天文と多岐にわたる。
殊に天文観察は世界の学者が注目している。
定家の晩年、陰陽師・安倍泰俊(やすとし)から聞いた古い記録を定家が書きまとめた超新星爆発がある。
超新星爆発は定家が生まれる前の1054年の出来事である。
1054年4月あるいは5月、その中旬の夜中に東の空おうし座あたりに明るい星が現れ、木星と同じくらい明るかった。
それは恒星が一生を終える時に大爆発を起こす超新星爆発の古代の正確な記録だ。
中国でも記録されているが明月記ほど詳細ではない。
最も明るい時には昼間でも見えて、出現後2年間も見えていたという。
彼は他にも梅の開花日、寒さ、降雪、雨、日照り、などを詳細に記録している。それらは当時の気象を知る重要な資料になっている。
彼は相当なオタクだったようだ。
そして間違いなく鎌倉時代一流のアーティストでインテリであった。
超新星爆発はオリオン座のベテルギウスが起こすと予測されている。
今世紀にそれと遭遇するのは無理だが、想像するだけで胸が躍る。
月のように煌々と輝くペテルギウスは、さぞや美しいだろう。
「砂時計」仕事机に3分間の砂時計が置いてある。
砂の落ちる速度は一定だが、初めは砂の減る量は遅々として進まないように見える。
しかし、半分を過ぎたあたりから加速がつき、最後は一瞬で落ちてしまう。
画像の上の砂がほとんど残っていない砂時計は人に例えると90歳くらいだろう。
砂時計を眺めていると人生みたいで切なくなる。
落ち切ってからひっくり返すと、再度、子供の頃のように時間がとても長く感じられ、気分がゆったりとする。
「歳を取ると、月日の過ぎるのが早くなる」と人はよく言う。
それを論理的に説明するのは難しい。
だが、砂時計のように視覚的に捉えればとてもよく理解できる。
もしかすると、脳の中の時間を感知する部分は、砂時計と同じ構造なのかもしれない。
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