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2024年1月15日 (月)

鳴く鳥に 雪降る国の憂あり 「お迎え現象」について 2024年1月15日

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「鳴く鳥に 雪降る国の憂あり」
隅田川から新河岸川を遡って来た鴎が寒風を捉え一点にホバリングしていた。
その凛とした姿は孤高で美しい。

今日の散歩は寒く、寒風に手が悴んだ。
夜、帰宅して音を止めていると、風の音と埼京線を走る電車の音が遠く聞こえた。


そんな夜は決まって、昔のことや先に逝った者たちを思い出す。
昔、ホスピスで多くの患者を看取った臨床医の手記を読んだことがある。
それによると、亡くなる寸前の患者の約4割が「お迎え現象」を経験するらしい。
それは呼吸困難により脳が酸欠を起こして見る幻覚で、そのほとんどは先に亡くなった人が現れる。
医師によると、幻覚を見た多くの患者は安らぎを覚え、静かに逝くことができるようだ。

私も亡くなる少し前の母が幻覚を見ていたのを経験している。
深夜、母の様子を見にいくと母はハッと目覚め
「あら繁、元気だったの」と嬉しそうに私を見上げた。
繁とは長兄の名前だ。兄は43歳の頃、脳出血で急死した。
自分が繁兄と似ているなど思ったことはないが、否定せず、母の手を握ってあげた。
他にも、その前年に母より先に逝った姉がそこにいると、母が嬉しそうに言ったことがあった。
そして数日後、母は私一人に看取られて静かに逝った。


物理学では、ものの在るなしは厳格に区別される。
しかし、脳科学では違う。患者本人の脳内で、現実と幻覚を区別することは難しい。
だから、お迎え現象で現れた親しい人を、幻覚だと否定する必要はない。

本人が信じているままにしてあげるのが、正しい見送りかただろう。

静かな夜は、時間が過去へ流れて行く。
どうしようもなく、昔のことや先に逝った人たちを思い出してしまう。

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