映像の世紀、ビリー・ホリデイの「奇妙な果実」2024年5月14日
米占領軍GHQの教育方針で自由と平等を私たちは教わった。
戦争への贖罪意識は強く、米国は正義の国だと信じきった。
しかし、現実の米国は強烈な人種差別の国だった。
昨夜の映像の世紀はビリー・ホリデイの名曲「奇妙な果実」がテーマ。
彼女は「奇妙な果実」と1939年に出会い、自分のレパートリーに加えた。
第二次大戦後、彼女はヘロイン中毒になりながらも活躍したが、1959年7月17日に44歳で死んだ。
「奇妙な果実」とは、白人に面白半分にリンチされ、木につるされた黒人の遺体のことだ。
醜悪なことに、リンチ殺人死体の写真は絵葉書にされて市販されていた。
彼らがリンチで黒人を殺すのは害獣を駆除する感覚に近い。
死体は狩猟の獲物でもあった。
だから、木から吊るされたリンチ死体の下に集まった白人老若男女たちは狩猟の打ち上げパーティのように楽しげに見えた。
南部の黒人男性は白人女性を見つめただけで、レイプの意思があると見なされ殺された。犯人の白人たちは捕まっても、裁判では白人の陪審員たちによって無罪にされた。
1882-1927年の間、リンチで殺された黒人数は判明しているだけで3513人。
1915年。リンチで焼き殺した死体写真の絵葉書を息子は父親へ出した。
「これは昨日の夜にやったバーベキューです。あなたの息子ジョーより」
その息子も父親も、リンチを実行した白人たちも、優しげな米国市民であったことが恐ろしい。
彼らの多くは善良で、困った人を見かけたら助けてあげる敬虔なキリスト教徒であった。
今の米国に番組で提示したほどの強烈な差別はない。
黒人オバマが大統領に選ばれたのは米国国民の贖罪意識が働いたのだろう。
しかし、気が重くなる番組だった。
米国は好きだが、そのような差別の歴史を知ると憂鬱になる。
今も精算しきれない差別が残っていては、米国でのポリコレは簡単に終わりそうにない。
人は、地球上で一番残忍な生物のようだ。
ビリー・ホリデイが歌った歌詞の最初部分。
南の木々には奇妙な実を結ぶ
葉には血が、根には血が付いている
南風に揺れる黒い体
ポプラの木からぶら下がっている奇妙な果実・・・
絵は30年前、有機トマトジュースのパッケージのために描いた。
人種に関わらず血は同じ赤だと、今回背景を白黒に加工した。
投稿する時「日本にも差別がある」「なぜ差別が生まれたか」それらへの問いが生じると思った。
しかしそれを記入すると「どこにでも差別がある」と論点はボケてしまう。
差別において重要なことは、まず最初に命を基準に考えるべきだ。
米国での黒人差別。
欧州でのユダヤ人やロマへの歴史的な差別意識は、ナチスの強制収容所での大量虐殺によって頂点に達した。
今も中国はウイグルなどで民族差別と虐殺を続けている。
中国の首脳は、それぞれの体質と合致したウイグル人収容者がいる。
もし必要となれば屠殺し、臓器移植用に使われる。
李克強が去年心臓病で死んだが、政敵とされた彼は心臓移植の恩恵を受けられなかった、と言われている。
以上は、日本での差別の歴史と比べたら常軌を逸している。
私は総花的な差別批判ではなく、シンプルに命の軽重から差別意識を論じるべきと考えている。
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