« 愚かな法律により犯罪が激増してゴーストタウン化するサンフランシスコ。2024年9月25日 | トップページ | 信じるものは救われる。心地よい古民家。2024年9月27日 »

2024年9月26日 (木)

映画「今夜、ロマンス劇場で」に子供の頃の記憶が重なった。2024年9月26日

M_1_20240926153701

「今夜、ロマンス劇場で」2018年。往年のスター美雪役・綾瀬はるかが一番美しく撮られた映画だ。ファンタジーなのでハッピーエンドなのがいい。主人公の映画助手・牧野健司役は坂口健太郎。老いてからは加藤剛が演じた。舞台は京都の撮影所だ。

加藤剛はその年に胆嚢がんで亡くなっているので遺作になった。劇中でも老いて死ぬ役だが、真に迫っていたのはそのような事情があったからだろう。

牧野は足繁く通っている映画館ロマンス劇場で、美雪が出演している戦前のファンタジー映画フイルムを偶然に見つけた。彼はその映画に惚れ込み、上映時間後、毎日一人で映写機にセットして熱心に鑑賞していた。

しかし、その映画フイルムがマニアに売られることになった。その前日、これが最後かと感傷的に鑑賞していた牧野の前に映画のヒロイン美雪がモノクロの姿で現れた。彼女は触れると消えてなくなる設定になっていた。牧野は美雪を自分が働いている撮影所に密かに連れて行って、ドーランで肌色を着色させ舞台衣装を着けさせた。

やがて二人は愛し合ったが、終生触れ合うことはできなかった。
そして、牧野は老いて死を迎えた。
その時初めて、美雪は臨終間際の牧野に触れ、消えてしまった。

二人は色彩のある死後の世界で結ばれた。
ストーリーは他愛ないが、映画好きには昔の映画館や撮影所の雰囲気が懐かしい。時代はテレビが登場して映画が衰退期を迎える頃だ。


今回の絵は、郷里南九州日南市大堂津に講演に招かれた帰りの無人駅の情景にした。宮崎空港まで車で送ると言われたのを固辞して、無人駅になってしまった大堂津駅で上り列車を待つていた。

ホームにも周りにも誰一人といなくて、線路には雑草が生い茂っていた。
ぼんやりとベンチに腰掛けていると、子供の頃の駅の情景が蘇った。
その小さな漁師町は活気があり、列車が到着する都度、大勢が乗り降りしていた。駅のそばには官舎があり駅長などが住んでいた。駅員は5.6人はいた。
駅構内には日通の作業場があって、山積みされた海産物をむしろや荒縄で梱包していた。

その頃、父は隣の漁港目井津町で小さな映画館の経営を任されていた。
チャンバラしか受けない漁師町で、父は文芸路線を推し進めた。まず、大阪に行って、「カルメン故郷に帰る」に次ぐ松竹第二回目のカラー映画「夏子の冒険」を買ってきた。原作は三島由紀夫の小説でいい映画なのだが、ヒットする訳がなかった。
ストリップ嬢を描いた「カルメン故郷へ帰る」にしておけばヒットしたかもしれない。その調子の経営を続けたので、父は多くの借金を抱えて映画館から撤退した。

私は出し物が変わる都度、映画館へ出かけていた。
時折、映写技師から短くなった銅で被覆された鉛筆状のカーボンを貰えるのが嬉しかった。当時の映写機の光源はカーボンをショートさせたアーク光を使っていた。だから、ロマンス劇場の映写室の光景がとても懐かしかった。

母は戦前、京都の撮影所と親しく、よく出入りしていた。
その頃、女優に誘われたが演劇の才は全くないので固辞した。しかし、小道具作りなどの美術へ誘われたら受けたかもしれない。そうなったら運命は変わり、私はこの世に存在しなかった。

M_0hana

|

« 愚かな法律により犯罪が激増してゴーストタウン化するサンフランシスコ。2024年9月25日 | トップページ | 信じるものは救われる。心地よい古民家。2024年9月27日 »