母の記憶が遠ざかるのは安らぎであるが寂しさもある。Macのメンテナンスを設定してディズニーランドへ行った。14年5月21日
30年以上昔に住んでいた家の古い物置に2m近い青大将が住んでいた。時々、物置の引き戸を開けると、鱗を青く煌めかせてゆっくりと逃げて行った。初夏の頃、その青大将が道の真ん中で脱皮を始めていたことがある。人に見つかったら傷つけられるかもしれない。私は脱ぎ始めた古い皮をそっと引っ張って脱皮を手伝った。
脱皮を終えた青大将はゆっくりと生け垣の中へ消えて行った。ヘビの抜け殻は商売繁盛のお守りになる。頭から尻尾まで傷つくことなく完全に揃った抜け殻は持ち帰って桐の箱に樟脳と一緒に大切にしまった。それは今も仕事台の上の棚に置いてある。その後、私は引っ越し、その一帯の古い家の殆どは立て替えられて、青大将の居場所はなくなった。
11年前、母がガン宣告された頃、母を車椅子散歩に連れ出すと、緑道公園で子供達が騒いでいた。
「ヘビがいた、ヘビがいた」
子供たちがはやし立てる草むらを、青黒い胴体が動いて行くのが見えた。
青大将がまだ生き残っていたことが、とても嬉しかった。
その日、自然公園で撮った35秒の動画が残っている。
画質の荒い当時のデジタル録画だが、今見ると昨日のことのように懐かしい。
その日は初夏の変わりやすい天気で、強い陽射しの後にわか雨が来た。
車椅子の母を公園管理棟の軒下で雨宿りさせ、折り畳み傘を広げて雨景色を撮った。
熱い石畳が雨で冷やされ、草原のクローバーに雨雫がキラキラ光っていた。
雨は涼しさを残して直ぐに通り過ぎた。
母は1,2年でガン死すると思っていた。
「雨もいいね」
雨を眺めながらつぶやく母の声が動画に残っている。
人の死と連綿と命をつないで行く自然。
母も私も、その対比に清々しさを感じていた。
それから7年後に母は死に、更に4年が過ぎた。
ものごとは一点に留まらず刻々と変化して行く。
毎日、住まいのものを減らすに従い、母の記憶が遠ざかるのを感じる。
それは安らぎであるが、同時に、すきま風に晒されているような、
心許ない寂しさがある。
昨日はMacのメンテナンスをした。様々なPCの手入れの中でボリュームの再構築と、ファイルとボリュームの最適化は大変に時間のかかる作業だ。 朝から各種メンテナンスをした後、最適化を始めると終わるのは夜だ。その待ち時間を利用して遊びに出た。
行く先は決めていなかったが、結局、舞浜へ行ってしまった。ディズニーランドかシーか、どちらにしようかと迷ったが、何となくランドへ入った。
6時から入園する人は多く、想像以上に混雑していた。
来園者で多いのは親子連れ。そして、女の子同士のグループと若いカップルが次に続く。老人夫婦も以前より増えている。私のような男一人は少ないが皆無ではない。スーツに書類入れなど持っている男性は、多分地方からの視察だろう。シーズンを過ぎたが修学旅行の高校生のグループも散見できた。
真っ先に蒸気機関車のウエスタンリバー鉄道へ行った。25分待ちで、列の隣は東南アジアから来た親子だった。目を輝かせている7,8歳の男の子の感動が伝わって来た。
今回は最後尾の客車の内側に腰掛けた。カーブにさしかかると先頭の機関車が見えて楽しかった。iPodでロジェワグナー合唱団の「故郷の人々」や「懐かしきヴァージニア」を聴いた。車窓の米国風景と、とてもピッタリして心地よかった。
次は蒸気船のマークトゥエイン号。いつもは1階デッキの舳先が定位置だが、久しぶりに最上階後部デッキへ行った。外輪船の蒸気の息づかいとiPodのアメリカ民謡がぴったりと重なってアメリカの大河を行く臨場感があった。
乗り終えるとエレキトリカルパレードが始まっていた。
無性に腹が減っていたので、長い列に並んでスモークターキーレッグを買った。520円と少し値上がりしている。ディズニーランドに来ると腹が減るのは、可愛い女性をたくさん眺めて、本能が目覚めるからかもしれない。
食べ終えてからホーンテッドマンションへ行った。パレードの真っ盛りなので待ち時間なしだ。控え部屋へ入ったのは私を含めて14人だけ。その寂しさで、皆少し恐怖が増しているように見えた。前回見た時はクリスマスバージョンで亡霊たちのサンタ姿が可笑しかったが、今回はいつものちょっと怖い姿に戻っていた。
出るとパレードは終わっていて、ホーンテッドマンションへ入る多勢の人たちとすれ違った。もう一度マークトゥエイン号に乗船し、いつもの定席、1階デッキ舳先の椅子に腰掛け手摺に寄りかかった。一瞬眠ってしまい、夢うつつに夜の沿岸風景が記憶に残っている。
下船してから350円のポップコーンを食べて、再度、ウエスタンリバー鉄道に乗った。下車したら、まだ肉が食べ足りない気分だった。いつものワールドバザールのコーヒーハウスへ行ってサーロインステーキとコーヒーを頼んだ。代金は2450円。最近、節約生活ばかりして来たので、昨夜はほんの少し昔の気分に戻ってみた。
遊び疲れた子供たち。
食事の後、ワールドバザールのジプシーの占い機で占った。代金は30円。夢の世界のディズニーランドでは気を滅入らせる凶は出ないので気楽な占いだ。
・・・水晶に素晴らしいものが見えます。あなたが待っていた人が長旅から帰ると、あなたの人生すべてが変わります。あなたはとても我慢強い人です。その我慢強さはあなたに良い事をもたらします。憂鬱な日々は間もなく終わります。あなたには多くの友人がいて、皆、協力的であなたを喜んで助けるでしょう・・・
占いカードの言葉はとても胸に響いた。
閉園まで30分を残していたが、良い気分のまま帰路についた。次はディズニーシーへ行って、昔のニューヨーク街角を眺めながらiPodでモリコーネの"Once Upon A Time In American "を聴きたいと思っている。
11時近くに帰宅すると、Macのハードディスクの最適化作業は終わっていた。
最適化とは・・様々なデータはハードディスクに整然と記録されている訳ではない。空き領域にファイルがピッタと入らないことも多く、その時はデータをバラバラに分割して記録される。しかし、バラバラの記録の読み取りは機械的な負担がかかる。それで、最適化作業で、データーを整然と並べ替えさせトラブルを減らす。
やり残しのメンテナンスがあったので、今日もメンテナンスを続けていた。
ヴィーナスの誕生のパロディ。
昔、渡辺正行氏の著書の装丁に使った。大掃除をしていて見つけた。
20歳くらいの頃、裸婦を夢中で描いていた。
このクロッキーは2分程で描いた。修練によってテクニックは身に付いたが、今の画風には邪魔な技術なので、それから20年かけて捨てた。
| 固定リンク